地域別にみた新型コロナウイルス流行前後のフレイルおよび基本チェックリスト下位項目該当割合の推移

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抄録

<p>【はじめに,目的】</p><p> 新型コロナウイルスの感染拡大による,フレイルの増加が報告されている。フレイル割合には地域差があることが知られているが,フレイルの推移の地域差は明らかでない。また,フレイルは多面的であり,介護予防推進のためには各側面に応じた対策が必要である。したがって,本研究の目的は,行政で活用している基本チェックリスト (以下,KCL)を用いて,フレイルおよびKCL下位項目該当割合の推移を地域別に調査することとした。 </p><p>【方法】</p><p> 分析データは,65歳から80歳までの要介護認定を受けていない地域在住高齢者を対象に実施した2016年,2018年,2020年,2022年の郵送調査データを用いた。回答者からデータ欠損のある者等を除外した全27,646名を分析対象とした。調査項目は基本属性,主観的健康感,KCLとし,フレイル判定は KCLの該当数により3個以下をロバスト,4~7個をプレフレイル,8個以上をフレイルとした。KCLの下位項目は,厚生労働省の基準により運動機能低下,低栄養,口腔機能低下,閉じこもり,認知機能低下,抑うつを判定した。地域単位は旧町の A~Eの5地域とした。統計学的解析は,全対象者および地域ごとのフレイルおよび下位項目該当割合の推移をχ2検定にて分析した。有意水準は5%とした。 </p><p>【結果】</p><p> 各調査時期におけるフレイル割合は,14.0%,7.3%,14.5%, 14.8%であり,各地域でも同様の推移を示した(p<0.01)。地域 別にみた下位項目該当割合の推移は,A地域は閉じこもり(6.4%, 3.9%,4.7%,4.1%; p<0.01),認知機能低下(26.3%,23.8%, 22.9%,27.2%; p=0.02),B地域は低栄養(0.4%,0.7%,1.2%, 1.3%; p=0.03),認知機能低下(26.8%,23.5%,22.5%,26.1%; p=0.01),C地域は認知機能低下(25.8%,21.6%,20.2%, 25.1%; p=0.01),D地域は認知機能低下(28.5%,22.8%,22.4%, 25.1%; p=0.03), 抑うつ(23.2%,18.6%,20.1%,16.9%; p=0.02),E地域は口腔機能低下(11.8%,10.6%,11.0%, 13.2%; p=0.04),閉じこもり(5.4%,3.7%,5.6%,3.5%; p<0.01),認知機能低下(25.1%,20.6%,21.6%,25.1%; p<0.01)に有意差を認めた。 </p><p>【考察】</p><p> フレイル割合は各地域で同様の推移を示すものの,下位項目該当割合は地域によって推移が異なることが示唆された。地域密着型の介護予防を推進するためには,地域ごとの下位項目の推移を見極め,それに応じた対策を講じる必要があると考えられる。 </p><p>【倫理的配慮】</p><p> 本研究は,ヘルシンキ宣言の趣旨に沿い,仮名加工情報のみを用い著者所属機関の同意を得た。</p>

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