重症サルコペニアを併存するSBMAへのHALリハビリで運動機能が改善した1症例 -2年間の経時的変化-

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抄録

<p>【はじめに】</p><p> 重症サルコペニアを併存した緩徐進行性の運動ニューロン疾患である球脊髄性筋萎縮症 (SBMA)症例に対して、進行予防と運動機能改善を目的にHybrid Assistive Limb (HAL)を用いて、運動機能の改善を継続できた症例を経験したので報告する。 </p><p>【症例紹介】</p><p> 67歳男性 6年前よりSBMAに対してリュープリル治療中、 ADL の低下に伴い当院HAL入院パス3週間1クール (5回/週×3週 入院毎平均HAL実施率12.5回)を実施し、4ヵ月毎のHAL入院を 2年間6クールの介入を行った。 </p><p>【経過】</p><p> 初回時のサルコペニア判定には、AWGS (Asian Working Group for Sarcopenia)2019を用いて、握力、生体インピーダン ス (BIA)法で測定した筋肉量SMI、歩行速度1.0/sec未満を採用し、重症サルコペニアの判定であった。経時的な運動機能評価とし て、2分間歩行距離 (2MWT)、TUG(Timed up & go test)、自覚的歩行安定感 (VAS:100㎜が最も自覚的歩行安定と定義)について6クールの経時的変化を計測した。2MWT、TUG、 VASについて初回HAL開始前と退院、3クール開始と終了、6ク ール開始と終了時に計測した。2MWTは、99.2m→114.7m→ 126.9m→129.4m→111.7m→122.9mであり改善を維持した。 TUGは、10.6sec→8.9sec→9.6sec→9.1sec→9.8sec→8.9secと改善を維持した。VASは、28㎜→61㎜→42㎜→40㎜→45㎜→ 34㎜と、初回時より自覚的歩行安定感は僅かに向上した。また、 HAL介入後歩行速度が改善し、重症サルコペニア判定からサルコペニア判定となった。 </p><p>【考察】</p><p> 定期的かつ継続的なHAL介入が、2MWT、TUG、および歩行安定感の結果から運動機能の改善と自覚的歩行安定感の向上に寄与し、歩行速度の改善からサルコペニアが改善した。HALによる装着者の動作意思を反映した動作補助を行うinteractive Biofeedback(iBF)により、神経可塑性を導く運動学習が疾患進行抑制に貢献したと考えられた。特に運動学習としては、理想的な歩行運動パターンの反復学習によるシナプス伝達効率の増強 (ヘッブの法則:Hebbian theory)と後シナプス細胞の受容体の活動性亢進、受容体数の増加によって形成される長期増強効果は、6ヵ月以内間隔が有効と報告されており、今回4ヵ月毎に実施した介入間隔も有用であったと考えられた。SBMA症例への HAL入院パスを実施し、HAL介入2年後も初回時に比べ、運動機能改善を維持し、疾患進行予防および重症サルコペニアの改善に有用となる可能性が示唆された。 </p><p>【倫理的配慮】</p><p> 本症例報告に関して、個人の匿名化と倫理的配慮を行い、学会発表を行うことの説明を行い、対象者に同意文書を取得した。</p>

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