当院糖尿病患者のサルコペニア有病率とその傾向について

DOI
  • 浜 健太朗
    筑波大学附属病院水戸地域医療教育センター JA茨城県厚生連総合病院 水戸協同病院 リハビリテーション部

抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p> 本邦における糖尿病患者は増加の一途をたどっている.さらに高齢糖尿病患者では酸化ストレス増加,糖尿病神経障害等の影響により,骨格筋量低下,筋力低下,及び身体機能低下が惹起されやすいと言われている.これらを特徴とするサルコペニアが近年重要視されており,糖尿病患者における新たな合併症として認識されるようになりつつある.しかし,糖尿病とサルコペニアの関連性を調査した報告は散見する限り少なく,本研究目的は糖尿病入院患者のサルコペニア有病率と,その傾向や特徴を調査することとした. </p><p>【方法】</p><p> 2020年1月から2021年3月までに当院に糖尿病教育で入院した患者57名を対象とし,評価不可やデータ欠損者は除外した.四肢骨格筋量は生体電気インピーダンス法(BIA)であるIn Body720(Biospace社製)で測定し, Skeletal Muscle mass Index(SMI)を算出した.サルコペニアの判定は,Asian Working Group for Sarcopeniaのアルゴリズムに従い,握力(男性28.0kg 以下,女性18.0kg以下),身体機能(歩行速度<1m/s or 5回椅子立ち上がりテスト≧12秒 or SPPB≦9)のいずれかまたは両方かつ, SMI(男性7.0kg/m2以下、女性5.7 kg/m2以下)に該当する場合をサルコペニア群とした.判定の結果,サルコペニア群14名と非サルコペニア群43名に分類した.調査・測定項目は,年齢・性別,糖尿病罹病期間,HbA1c,BMI,Geriatric Nutritional Risk Index(GNRI),Timed Up and Go Test(TUG),運動習慣の有無、 就業の有無とし,2群間で比較した.統計解析はEZRを使用し, Fisherの正確検定とt検定を用い, 有意水準は5%とした. </p><p>【結果】</p><p> サルコペニア有病率は24.5%であり,65歳以上に限ると57.1%と高率に合併していた. サルコペニア群(n=14)は, 非サルコペニア群(n=43)に比し,年齢(75.0±8.6 v.s. 53.3±13.4歳), 糖尿病罹病期間(19.6±15.4 v.s. 8.6±11.0年), TUG(10.4±3.3 v.s. 7.3± 2.9秒)が高値で, BMI (22.5±2.8 v.s. 26.5±5.0kg/ m2), GNRI(101.9±10.2 v.s. 112.4±10.3), 就業率(21.4 v.s. 76.7%) で低値を認めた(p<0.05). </p><p>【考察】</p><p> サルコペニアにおける一般高齢者の有病率は6-12%と報告されており,糖尿病の罹患により有病率が高くなることが示された.サルコペニア診療ガイドラインで栄養・運動療法は推奨されているが,今回の研究では運動習慣に関しては有意差を認めなかった.しかし就業率に有意差を認め,ガイドライン上でも豊富な身体活動量がサルコペニア予防に推奨されており,今回の研究結果に影響を及ぼした可能性がある. </p><p>【倫理的配慮】</p><p> 本研究はヘルシンキ宣言に則り,対象者に対して研究の目的や内容,個人情報の取り扱い等に口頭で十分な説明を行い,参加の同意を得た上で実施した.</p>

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