当院の小・中学生に対する野球肘検診の取り組み
抄録
<p>【はじめに、目的】</p><p> 野球肘検診は上腕骨小頭離断性骨軟骨炎 (OCD)、上腕骨内側上顆裂離の早期発見を目的として全国各地域で行われている。 2018年より当院で実施している野球肘検診の紹介と野球肘の発生と身体的特徴との関連について報告する。 </p><p>【方法】</p><p> 対象は札幌市あいの里地区、当別町、江別市の小学生1年生から6年生、中学生とした。2018年より当院で行った野球肘検診の総検診受診者は410名であった。 検診内容はスポーツ歴や痛み、既往歴に関する問診、医師による超音波エコーによるOCD、上腕骨内側上顆裂離の有無、理学療法士による可動域テスト (肩関節、肘関節、股関節、胸椎)、下肢タイトネステスト、投球フォームチェック、パフォーマンスチェック、Star Excursion Balance Test(SEBT)の前方、後外側、後内側とした。SEBTの結果は計測距離を転子果長で除して正規化した。2022年度より投球時の肘外反トルク (Nm)、前腕角度 (°)、腕のスピード (rpm)を計測するためにパルススロー (Onside World, 大阪)を導入した。検診終了後には野球肘や投球フォームに関する講演会と各選手の検診結果に合わせたストレッチ指導を行った。 </p><p>【統計解析】</p><p> 計測パラメータとOCD、上腕骨内側上顆裂離との関係性を調べるためにエコー異常群と正常群でt検定を行い、有意差があった項目で重回帰分析を行った。有意水準は0.05に設定した。 </p><p>【結果】</p><p> 検診受診者410名の内8名 (1.96%)がOCD、21名 (5.12%)が上腕骨内側上顆裂離であった。中学生の上腕骨内側上顆裂離は SEBTの非投球脚の後内側方向の距離が説明変数として算出された (エコー異常群:0.94±0.09、正常群:1.03±0.11、p= 0.011)。肘外反トルクとエコー所見、各パラメータとの関連はなかった。 </p><p>【考察】</p><p> 本検診の結果から非投球脚の後内側方向の距離が内側上顆裂離と関連していることが示された。非投球脚の後内側方向の距離の減少は投球側の股関節の筋力低下と関連するため、エコー異常群は投球脚の股関節の支持性が低い可能性が考えられた。 SEBTは簡便に行えるテストであり、野球肘発症の推測のために検査が推奨されるテスト項目と考えられた。投球時の肘へのストレス値を算出のためにパルススローを用いたが各パラメータとの関連はなかった。今回は5mの距離でのネットスロー時の計測だったため、実際の投球時のデータを計測するなど野球肘の原因因子の追及に向けて工夫して行っていきたい。 </p><p>【倫理的配慮】</p><p> 本検診については北海道医療大学病院の倫理審査を受けた (承認番号:第2018_009号)。検診参加者には検診で得られたデータについて学会等で公表されることを説明し同意を得た。</p>
収録刊行物
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- 日本予防理学療法学会 学術大会プログラム・抄録集
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日本予防理学療法学会 学術大会プログラム・抄録集 2.Suppl.No.1 (0), 214-214, 2024-03-31
日本予防理学療法学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390862623770899328
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- ISSN
- 27587983
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用可