低周波治療器を用いた作業療法により上肢麻痺患者における趣味活動の喪失を予防した一例

DOI
  • 中山 和彦
    医療法人医仁会 さくら総合病院 リハビリテーションセンター
  • 舟橋 雄大
    医療法人医仁会 さくら総合病院 リハビリテーションセンター
  • 磯村 隆倫
    医療法人医仁会 さくら総合病院 リハビリテーションセンター
  • 小林 豊
    医療法人医仁会 さくら総合病院 消化器病センター

抄録

<p>【はじめに】</p><p> 運動麻痺は日常生活動作の制限のみならず,趣味活動の喪失をもたらす。運動麻痺に対しては神経筋電気刺激療法の有効性が報告されているが,機能改善に着目した報告が多く,趣味活動に言及した報告は少ない。今回,上肢の運動麻痺が生じた患者に対して神経筋電気刺激療法を用いた介入により趣味活動の喪失を予防した症例を経験したため報告する。 </p><p>【症例紹介】</p><p> 症例は頚部脊柱管狭窄症により左側の第5頚髄領域に運動麻 痺が生じた70代男性であった。左肩関節の関節可動域 (ROM)は屈曲10°,外転10°であった。左上肢筋力 (MMT)は左三角筋2,回旋腱板2,上腕二頭筋3であり,握力は35kgであった。日本整形外科学会頚髄症治療成績判定基準 (JOA)スコアは 13.5/17点であった。また,患者の趣味はゴルフであり,趣味活動を維持することを強く希望されていた。このゴルフに対するカナダ作業遂行測定 (COPM)では,重要度8/10,遂行度 0/10,満足度0/10であった。 </p><p>【経過】</p><p> 術前は受傷後3日目から外来リハビリテーションを開始し,受 傷後17日目に前方頸椎除圧固定術を施行された。作業療法では術前から随意運動介助電気刺激装置 (IVES)を使用し,麻痺側の三角筋,上腕二頭筋,回外筋に対して,治療的電気刺激としてのノーマルモードとバイオフィードバックを目的としたトリガーモードを併用した。また,段階的にトリガーモードの感度設定を変更して難易度を漸増させていった。受傷後24日目に退院し,その後は外来で作業療法 (3回/週)を継続し,受傷後52日目からゴルフ練習場でのスイング練習を開始した。受傷後103日目において,左肩関節のROMは屈曲150°,外転160°まで改善した。左上肢MMTは三角筋4,回旋腱板4,上腕二頭筋5まで改善し,JOAスコアは15/17点であった。趣味活動ではゴルフコースを回ることが出来るようになり,COPMは遂行度8/10,満足度8/10まで増加した。 </p><p>【考察】</p><p> 本症例は術前から神経筋電気刺激療法を用いることにより,良好な運動学習を行うことができた。また,麻痺筋の機能が改善することで協調的な練習を行うことができるようになり,趣味活動の再開へ繋がった。このことから,医療デバイスを用いた介入は,趣味活動の喪失を予防する一助となったと考える。 </p><p>【倫理的配慮】</p><p>患者にはヘルシンキ宣言に基づいて文書と口頭 にて意義、方法、不利益等について説明し同意を得て実施した。</p>

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