回復期病棟における入院時の重度サルコペニアの評価と複数回転倒の関連性

DOI
  • 足立 睦未
    社会福祉法人こうほうえん 錦海リハビリテーション病院 リハビリテーション技術部 理学療法部門
  • 今田 健
    社会福祉法人こうほうえん 錦海リハビリテーション病院 リハビリテーション技術部 理学療法部門 こうほうえん 法人本部

抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p> サルコペニアとは、高齢期に見られる骨格筋量の減少と筋力もしくは身体機能の低下で、1989年Rosenbergにより提唱された。錦海リハビリテーション病院 (以下、当院)は、入院時にサルコペニアの評価を行っている。転倒を経験した対象者とサルコペニアの関連性を検討し、入院時のサルコペニア評価に対する重要性について考察した。 </p><p>【方法】</p><p> 対象は、2017年4月から2022年9月までに退院した延べ1154例のうち、1145例 (平均年齢74.0±15.0歳、平均在院日数 66.8±41.9日)であった。除外基準は、四肢のいずれかを切断しているまたは、データに欠損のある対象者とした。電子カルテより、入院時の骨格筋量指数、握力、歩行速度を調査し、 Asian Working Group for Sarcopenia (以下、AWGS)の基準に従い、重症サルコペニア、サルコペニア、該当しない対象者 (以下、非該当)を評価した。さらに、先行研究より、非該当の対象者の内、AWGSの基準値を採用し、握力が基準値を下回る者をダイナペニアとし、計4種類に分けた。転倒回数は、先行研究と同様に、入院中に転倒0回 (以下、非転倒群)と1回転倒した (以下、1回転倒群)、2回以上転倒した (以下、複数回転倒群)の 3群に分類した。4種類のサルコペニア評価から、各転倒回数における症例数を集計し、カイ二乗検定を用いて検討した。有意水準は5%未満とした。 </p><p>【結果】</p><p> 非転倒群 (重症サルコペニア453例、サルコペニア124例、ダイナペニア55例、非該当300例)は、重症サルコペニアと非該当で有意差を認めた。1回転倒群 (重症サルコペニア93例、サルコペニア13例、ダイナペニア11例、非該当21例)で有意差は認めなかった。複数回転倒群 (重症サルコペニア49例、サルコペニア5例、ダイナペニア4例、非該当17例)は、重症サルコペニアで有意差を認めた。 </p><p>【考察】</p><p> 重症サルコペニアは複数回転倒に繋がりやすいことが分かった。先行研究において、下肢筋力の低下は複数回転倒の危険性が高いとの報告がされている。重症サルコペニアに該当した対象者は、入院中の不活動による筋萎縮や疾患による身体機能の低下に加え、骨格筋量が減少している状態であるため、特に複数回転倒のリスクが高い状態であったと考えられる。 </p><p>【結論】</p><p> 入院時に、重症サルコペニアの該当者を評価により把握することで、入院当初から複数回転倒を見越した対策が行える。 </p><p>【倫理的配慮】</p><p> 患者の基本情報として年齢と性別、サルコペニアの評価として筋肉量と握力、歩行速度の情報収集を電子カルテより行った。転倒回数は、転倒転落カンファレンスシートの記録から集計した。収集したデータは、ヘルシンキ宣言に従い、セキュリティー対策を行ったコンピューターに保管した。また、個人情報が特定されないよう患者名は匿名とし、識別が出来るように番号を付け、個人情報保護に十分配慮した。</p>

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