急性期病院におけるFLS委員会の立ち上げとその成果について

DOI

抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p>2022年4月より施行された二次性骨折予防継続管理料により、大腿骨近位部骨折に対する治療においては、急性期、回復期、生活期にわたる継続的なアプローチが必要とされるようになった。このような背景のもと、当院では2022年6月よりFracture Liaison Services (以下FLS)委員会を立ち上げ、急性期から骨粗鬆症予防に関する活動を実施している。本稿では、委員会の立ち上げから2023年3月までの10か月間における活動とその成果について報告する。</p><p>【方法】</p><p>FLS委員会は医師、看護師、放射線技師、臨床検査技師、薬剤 師、管理栄養士、理学療法士で構成している。委員会では、対象患者の選定とクリニカルパス (以下パス)・プロトコルの作成、データベースの管理、患者用リーフレットの作成を行った。主治医よりFLS適用と指示された対象患者は、術後FLSパスに準じて、DXA、血液検査を実施し、骨粗鬆症の判定を行い、理学療法士は握力と下腿周径を計測、作業療法士がMMSEを評価した。</p><p>【結果】</p><p>2022年6月から2023年3月の対象患者数は97名 (入院元:自宅 71名、施設24名)であった。対象の内、入院前より骨粗鬆症の治療中であった患者15名 (15.5%)、FLS適応により薬物療法開始に至った患者57名 (58.8%)であった。転帰先は、在宅35名 (36.1%)、施設2名 (2.1%)、転院 (回復期等)57名 (58.8%)、死亡3名 (3.1%)であった。握力にて判定したサルコペニアの有病率は66名 (68%)であった。</p><p>【考察】</p><p>当院において、これまで積極的な骨粗鬆症の治療は行っておらず、FLSパスの運用により約6割の患者に骨粗鬆症の治療を開始することができた。また、地域連携を目的に継続管理料に関する情報を転院先に提示することで、継続的な骨粗鬆症の治療継続を行うことができた。しかしながら、当院から回復期病院への転院後、退院して外来通院に至り継続管理料3が算定できた患者はわずか3名であった。また、施設退院患者は継続的な外来通院は無く、治療の継続の確認は困難である。これらを踏まえ、地域全体で骨粗鬆症治療の継続的な治療をするためには、地域連携による意思統一の課題が見えてきた。</p><p>【結論】</p><p>当委員会の活動により、FLSパスを使用することで他職種が共同で骨粗鬆症治療に関する取り組みが可能となった。また、地域における課題も明確になりつつあり、二次性骨折予防を地域で取り組むための一手となった。</p><p>【倫理的配慮】</p><p>対象となる患者に対して、手術に関する説明時に個人情報保護法に準じて個人情報を保護し、入院中に得たデ ータについて使用することの同意を得ている。尚、データベース作成時には個人情報を削除してセキュリティデータとして取り扱っている。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ