転倒恐怖感を認める要介護高齢者は自己の身体能力を誤認識している

DOI
  • 池田 圭介
    介護老人保健施設 三方原ベテルホーム リハビリテーション課
  • 芦澤 遼太
    総合病院 聖隷三方原病院 リハビリテーション部

抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p> 転倒恐怖感 (Fear of fall:FOF)を認める高齢者は転倒リスクが 高く、これはFOFを多く認める要介護高齢者において重要な問題である。FOFを認める高齢者の転倒リスクを高める一要因に、自己の身体能力の誤認識(見積もり誤差)が報告されている。しかし、FOFと見積もり誤差の関連性を報告した先行研究の対象は健常高齢者であり、要介護高齢者を対象とした研究は見当たらない。要介護高齢者のFOFと見積もり誤差の関連性を明らかにすることは、要介護高齢者の転倒予防介入を行う上で重要な情報になる。そこで本研究の目的は要介護高齢者のFOFと見積もり誤差の関連性を調査することとした。 </p><p>【方法】</p><p> 研究デザインは横断研究とした。対象は当施設の通所リハビリテーションを利用し、MMSEが18点以上かつ歩行が自立している要介護高齢者36名(年齢83.2±8.8歳、女性19名)とした。 FOFは「転ぶことに恐怖がありますか」の質問に対し、「はい /いいえ」の選択肢から回答を得た。見積もり誤差はFRTにて評価し、対象者の前方からリーチ目標物を接近させ、リーチ可能と判断した距離を見積もり距離とし、実測値との差を絶対値で記録した。その他の評価項目は、年齢、性別、要介護度を診療録より抽出し、MMSE、FRT、SPPB、TUGを測定した。統計解析はFOF群と非FOF群の群間比較にMann-Whitney U検定、カイ二乗検定を用いた。その後、従属変数をFOFの有無(FOFあり: 1、FOFなし:0)、独立変数をFRT見積もり誤差の他に群間比較で有意差を認めた項目としたロジスティックス回帰分析を実施した。有意水準は5%とした。 </p><p>【結果】</p><p> FOF群は15名であった。群間比較の結果、FOF群は非FOF群と比べて見積もり誤差とTUGが有意に高く、SPPBが有意に低か った。ロジスティック回帰分析の結果、FOFと見積もり誤差は有意に関連していた(オッズ比:1.67、95%信頼区間1.18-2.77、 p<0.05)。 </p><p>【考察】</p><p> 要介護高齢者のFOFと見積もり誤差が関連することが明らかになった。本研究は横断研究のため、因果関係は明らかではないが、FOFを認める要介護高齢者は自己の身体能力を適切に把握していないことが示された。 </p><p>【結論】</p><p> FOFを認める要介護高齢者の転倒予防介入を行う上で見積もり誤差に着目する必要性が示唆された。 </p><p>【倫理的配慮】</p><p> 本研究は聖隷三方原病院倫理委員会の承認を得て実施した(研究番号:第21-11)。対象者に本研究の概要と目的、個人情報の保護など十分な説明を行い、口頭及び書面にて同意を得た。</p>

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