社会的フレイルと健康問題

DOI
  • 堤本 広大
    国立長寿医療研究センター 予防老年学研究部

抄録

<p>【概要】</p><p> 2001年に、Friedらがフレイルの表現型モデルに関する概念を提唱し、その後、2007年にはRookwoodらによって障害蓄積モデルの概念が取りまとめられた。本邦においては、世界に先駆けて施行されていた介護保険も相まって、これらの定義が上手く融合し、フレイルを障害蓄積モデルの概念を用いて、健常高齢者と要介護高齢者の中間的な状態であると定義しつつ、身体的側面、心理・精神的側面、社会的側面に細分化した際に、身体的側面に関するフレイルについて、表現型モデルの考え方を取り入れている。本発表においては、フレイルの概念を整理しつつ、上述した通り、フレイルの様々な側面が細分化されて評価されており、その中でも、社会的側面に焦点を当てて議論を進める。まず、フレイル全般の概念の整理し、その後、社会的フレイルの概念について現状の提示を行う。また、日本人の地域在住高齢者を対象としたコホート研究から得られた知見を紹介する。具体的な治験としては、国立長寿医療研究センターで実施しているコホート研究NCGG-SGSのデータを活用する。 NCGG―SGSにおいては、社会的フレイルを「昨年と比較して、外出頻度が減った」「友人の家を訪ねることがない」「家族・友人の役に立っていると思えない」「1人暮らしである」「誰とも会話をしない日がある」の項目において、1項目該当した場合を社会的プレフレイル、2項目以上該当した場合を社会的フレイルと操作的に定義した。地域在住高齢者を、健常高齢者と社会的フレイル高齢者に分類し、追跡調査を行った結果、2年間での要介護認定移行リスクは1.7倍、4年間でアルツハイマー型認知症発症リスクについては1.5倍のリスクを有することが示唆された。つまり、身体的フレイルや認知的フレイル同様に、社会的フレイルを有することが、高齢期の健康問題に対して影響を持ち得ることが分かってきた。総括すると、フレイルには、身体的、精神・心理的、社会的といった様々な側面を有しており、本発表で紹介した社会的フレイルを有している高齢者については、健常高齢者と比して、健康問題を生じる可能性が高く、今後、介入対象として注目すべきであると考える。 </p><p>【倫理的配慮】</p><p>国立長寿医療研究センター倫理・利益相反委員会の承認を得た。</p>

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