低骨密度,低筋肉量の重複が地域在住高齢者のフレイル,ロコモティブシンドロームに与える影響

DOI
  • 久喜 啓誉
    埼玉医科大学総合医療センター リハビリテーション部
  • 新井 智之
    埼玉医科大学 保健医療学部理学療法学科
  • 大林 茂
    埼玉医科大学総合医療センター リハビリテーション科

抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p> 低骨密度,低筋肉量の重複が地域在住高齢者のフレイル,ロコモティブシンドローム (ロコモ)に与える影響を明らかにすること. </p><p>【方法】</p><p> 対象は,2018・2019年に体力測定会に参加した65歳以上の地域在住高齢者505名 (男性154名,女性351名,平均年齢73.5± 5.3歳)とし,基本属性,身体組成,運動機能,生活機能,フレ イル・ロコモの該当有無を調査した.対象者の低骨密度を骨粗鬆症治療ガイドライン2015での骨粗鬆症検診において「要精検」に該当するYAM値80%未満,低筋肉量をAWGS2019の診断に則り,男性<7.0kg /m2,女性<5.7kg /m2とした.骨密度と補正四肢筋肉量の測定値を元に対象者を4群 (正常群/低骨密度群/低筋肉量群/重複群)に分類し,調査項目の比較検討を行った.また,フレイル,ロコモの有無を従属変数とし,骨密度,筋肉量による4群を独立変数とし,年齢,性別で調整した多重ロジスティック回帰分析を実施した. </p><p>【結果】</p><p> 4群の人数割合は,男女ともに低骨密度群が最も多く,低筋肉量群に該当する割合が最も少なかった.4群の比較検討を行った結果,重複群では運動機能 (最大握力,最大歩行速度,2ステップ値),生活機能 (基本チェックリスト合計点,FRAXによる骨折リスク)が正常群と比較して有意に低下していた.また,多重ロジスティック回帰分析の結果,4群において,正常群を参照カテゴリに設定して低骨密度群,重複群で有意な関連が見られ,オッズ比 (95%信頼区間,有意確率)はそれぞれ1.72 (1.117-2.634、0.014),3.77 (2.070-6.865,<.001)であり, フレイルの該当率が高いことが明らかとなった. </p><p>【考察】</p><p>本研究の結果から,骨密度低下と筋肉量低下が重複す ることで,単独で罹患するよりも,運動機能や生活機能がさらに低下することが示され,加えてフレイルに該当する割合も高くなることが明らかとなった.骨と筋の障害を正確に把握し,運動機能,生活機能の評価を行い,適切な対策を講じることは,有効なフレイル対策となる可能性がある. </p><p>【倫理的配慮】</p><p>本研究は埼玉医科大学保健医療学部倫理委員会の承認を得て行われた (承認番号:937・保健医療学部158-2).</p>

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