回復期リハビリテーション病棟入院患者におけるCOVID-19クラスター前後でのバランス機能と歩行能力の変化

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抄録

<p>【目的】</p><p>当院回復期リハビリテーション病棟で3回発生した COVID-19クラスター下での理学療法 (PT)の実施状況と、入院患者のバランス機能と歩行能力の変化を調査・比較した。 </p><p>【方法】</p><p>当院回復期リハビリテーション病棟で3回発生した COVID-19クラスターを調査対象とした。PT介入のあった患者は1期60名、2期50名、3期59名であった。3回のクラスター期間中のPTの実施状況、患者のBerg balance scale (BBS)と6分間歩行テスト (6MD)の変化を後方的に調査し、各クラスターにおけるBBSと6MDのクラスター前、クラスター中、クラスター後での変化をHolm法で有意水準を補正したWilcoxonの符号付順位和検定で比較した (α=0.05)。 </p><p>【結果】</p><p>クラスター中はリハビリテーション医療の制限が設けられた。その間、理学療法士は他職種と連携し、患者への自主練習の提供、感染対策を強化した中での離床・運動機会の確保を図った。1期はBBS、6MDともにクラスター前とクラスター中で有意差はなかったが、クラスター中からクラスター後にかけて有意に向上した。2期はBBSも6MDもクラスター前とクラスター中で有意差はなかったが、BBSはクラスター中からクラスター後にかけて、6MDはクラスター前からクラスター後にかけて有意に向上した。3期はBBS、6MDともにクラスター前からクラスター中にかけて、またクラスター前からクラスター後にかけて、さらにクラスター中からクラスター後にかけて有意に向上した。PT単位数は、1期:0.2±0.8 (通常:4.8±1.8)、2期:2.0±2.0 (通常:4.1±1.6)、3期:2.9±1.6 (通常:4.2 ± 1.6)であった。 </p><p>【考察】</p><p>クラスター前よりもクラスター中に身体機能が有意に向上したのは3期だけであった。3期はクラスター中のPT単位数が多く、より専門的に運動機会の提供を行えたことが機能向上に繋がったと考える。また、1期と2期も平均すると身体機能は低下しておらず、理学療法士がケア業務に従事しながらも、自主練習や離床を促したことが有効であったと考える。本研究からクラスター期間中もPT単位介入を継続する重要性が示唆された。一方で、長下肢装具練習や基本動作練習など密着度の高い練習場面は接触・飛沫感染リスクが高いため、感染症対策の確実な実施が求められる。 </p><p>【倫理的配慮】</p><p>当院倫理委員会の審査・承認を得て実施した。電子カルテによる後方視的に調査を実施するにあたり、個人情報遵守のもと行った。</p>

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