高齢誤嚥性肺炎患者における入院時身体機能と在院日数の関連性

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抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p> 近年、高齢化に伴い誤嚥性肺炎は増加している。当院ではクリ ニカルパスを使用し、入院早期から体位ドレナージや口腔ケアを積極的に行っているが、入院に伴う身体機能の低下を認め、機能回復や在宅復帰に難渋し、他の呼吸器疾患に比べ在院日数が長期になることがある。そこで、当院における高齢誤嚥性肺炎患者における入院時の身体機能と在院日数の関係を検討した。 </p><p>【方法】</p><p> 対象は2022年5月~2023年4月に当院にて誤嚥性肺炎と診断され入院中理学療法介入を行った39名 (男性29名、女性10名、平均年齢85.7±8.2歳)とした。本研究では65歳以下、入院中の死亡退院、当院地域包括ケア病棟へ転棟、他疾患が原因で他院へ転院、またデータ欠損は除外した。理学療法は患者の状態に応じ20~40分/日、5~6回/週、コンディショニングやADL練習、全身運動を中心に実施した。調査項目は、在院日数、患者背景 (年齢、身長、体重、体格指数 (BMI))、肺炎重症度分類 (A-DROP)、既往歴、Alb、GNRI、要介護度、入院時のADL (B.I.)、握力 (左右の良い方の平均値)、上腕・下腿周径 (左右最大値の 平均値)とした。各項目はShapiro-Wilk検定にて正規性の確認をし、PearsonおよびSpearmanの相関分析を用いた。続いて重回帰分析を用いて在院日数をアウトカムとし、2変量解析によりに有意差が認められた入院時B.I.、下腿周径を要因とする重回帰モデルを作成し、共変量に年齢、GNRIを投入した。統計学有意水準は5%とした。統計解析にはEZR version 1.61を使用し、いずれの解析も有意水準は5%とした。 </p><p>【結果】</p><p> 対象者の在院日数は21.1±12.1日であった。在院日数と各項目との相関分析では、年齢、BMI、A-DROP、握力は相関関係を認めなかったが、下腿周径 (r=-0.4、p<0.05)、B.I. (r=-0.52、p <0.01)と負の相関関係を認めた。また重回帰分析の結果、有意な項目として抽出されたのはB.I. (β=-0.14、p=0.04)と年齢 ( β=-0.46、p=0.04)であった (調整済みR2=0.24)。 </p><p>【考察・結論】</p><p> 当院の高齢誤嚥性肺炎患者の在院日数には、入院時のADL (B.I.)と年齢が関連していることが分かった。サルコペニアの評価で用いられる下腿周径も相関を認めていることから、入院後の ADL、身体機能の評価を多職種に共有し、効率的な退院支援に繋げることが必要である。 </p><p>【倫理的配慮】</p><p>本研究はヘルシンキ宣言の倫理的指針に従い実施した。データ抽出に際し、患者個人が特定できないよう個人情報保護に留意して実施した。本研究はマツダ病院倫理審査委員会の承認を得た。</p>

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