通いの場の概念と類型~地域づくりに向けた通いの場の捉え方~

DOI
  • 植田 拓也
    東京都健康長寿医療センター研究所 東京都介護予防・フレイル予防推進支援センター 桜美林大学 健康福祉学群

抄録

<p>【目的】</p><p>令和元年度の「一般介護予防事業等の推進方策に関する検討会取りまとめ」において,高齢者の価値観や趣向・ライフスタイルが多様化を背景に,通いの場は「行政が介護保険による財政的支援を行っているものに限らない多様な場が含まれるもの」として,行政による通いの場の把握の範囲の拡大が明文化された.一方で,行政が把握し,支援・連携すべき通いの場の 概念や類型は明確でないことが課題であった.これを踏まえ,令和2年度に東京都健康長寿医療センター研究所から研究所版類型が,令和3年度に厚生労働省から厚労省版類型が発信された.本発表では,通いの場の概念と類型及び活用を紹介する.</p><p>【方法】</p><p>令和2年度に我々は通いの場の概念整理検討委員会を設置し,概念として「通いの場とは,高齢者をはじめ地域住民が,他者とのつながりの中で主体的に取り組む,介護予防やフレイル予防に資する月1回以上の多様な活動の場・機会のことをいう」と定義した.類型は,住民の主体的な「運営」を前提として,3つのタイプ (タイプⅠ:趣味活動,就労的活動,ボランティア活動の場等の「共通の生きがい・楽しみを主目的」,タイプⅡ:住民組織が運営するサロン,老人クラブ等の「交流 (孤立予防)を主目的」,タイプⅢ:住民組織が運営する体操グループ活動等の「心身機能の維持・向上等を主目的」)に分類し,必要な通いの場の戦略策定への活用が目的である.一方,令和3年度に厚生労働省から発出された類型は,『運営主体,場所,活動内容』の3つの視点を踏まえ,既存の通いの場の把握の推進を目的としている.</p><p>【結果】</p><p>この2つの類型は,相補的に活用することが可能である.まず,厚生労働省版の類型で,通いの場の総数を把握,地域の通いの場の多様性を確認し,その上で,主目的別での類型ごとの多寡を把握する.加えて,地域の生活課題や健康課題,ニーズを踏まえて,どの類型の通いの場を戦略的に立ち上げていくのかを系統的に考えていくことにつながる.また,主目的による研究所版類型を活用することで,通いの場の効果評価に向けたアウトカム指標の選定にも役立つと考えられる.</p><p>【結論】</p><p>通いの場の概念と類型の活用方法について紹介した.アフターコロナにおける通いの場の推進に向けて,改めて PDCAサイクルに沿った,地域診断,効果評価による通いの場推進が重要であり,本発表が一助になればと考える.</p><p>【倫理的配慮】</p><p>本発表は、公開データに基づく報告であるため、倫理審査の対象とならない。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ