介護老人保健施設入所超高齢者の筋肉量,脂肪量変化は認知症の有無によって異なる

DOI
  • 沼口 峻也
    国際医療福祉大学大学院 医療福祉研究科 保健医療学専攻理学療法学分野 基礎理学療法学
  • 久保 晃
    国際医療福祉大学大学院 医療福祉研究科 保健医療学専攻理学療法学分野 基礎理学療法学
  • 石坂 正大
    国際医療福祉大学大学院 医療福祉研究科 保健医療学専攻理学療法学分野 基礎理学療法学
  • 屋嘉比 章紘
    国際医療福祉大学大学院 医療福祉研究科 保健医療学専攻理学療法学分野 基礎理学療法学

抄録

<p>【はじめに,目的】</p><p> 超高齢社会である本邦において,認知症を要する高齢者は増加傾向にあり,認知症高齢者における認知機能と筋肉量や脂肪量などの体組成成分との関連性が報告されている.しかしそれらは認知機能の重度な高齢者を対象にした報告が多く,施設入所高齢者の体組成成分の変化を縦断的に認知症の有無で比較した研究は少ない.以上から認知症の有無により施設に入所している高齢者の体組成成分に変化が生じるのかを明らかにすることを目的とした. </p><p>【方法】</p><p> 栃木県内の介護老人保健施設に入所中の65歳以上の高齢女性 51名 (年齢90.0±5.8歳;平均±標準偏差)を対象とした.対象者の身長は153.4±5.9㎝,体重43.9±8.4㎏,BMI 18.7±3.6 ㎏/m2であった.月に1回の計測を連続して3回実施できた者を解析対象とした.対象者の身長は,久保らの研究を参考に前腕長と下腿長の長さより推定式,身長=2.1× (前腕・下腿合計長) +37.0を用い算出した.認知症の有無は主治医の診断およびカルテ情報を採用した.体成分分析装置の計測は,機器の使用手引きに準じて計測を実施した.なお,体成分分析装置の計測前の運動は避けるようにした.認知症の有無と時間経過を要因とした反復測定2元配置分散分析を行い,有意水準は5%とした. </p><p>【結果】</p><p> 2カ月間の体組成成分の変化において,認知症の有群と比較して無群では筋肉量と除脂肪体重,骨格筋指数,右腕筋肉量,左腕筋肉量,体幹筋肉量が低下しており,交互作用がみられた.また同様に有群と比較して無群では脂肪量と体脂肪率が増加しており,交互作用がみられた. </p><p>【考察】</p><p> 施設入所した高齢者で認知症の有する高齢者では,有さない高齢者と比較して体組成成分は維持されていた.先行研究では施設入所した認知症の高齢者では1年間の縦断において骨格筋量は減少し脂肪量は増加すると報告されている.しかし本研究の結果は,ベースラインから2カ月という短期間であれば,認知症を有さない高齢者よりも骨格筋量や脂肪量は維持されるという結果であった. 高齢者の体組成成分の変化は食事量や活動量が影響することが考えられるが,本研究ではその影響を検討できていない.認知症の有無が食事量・食形態、活動量、介護度などの日常生活を介して,骨格筋量や脂肪量の変化に影響していると考えられ,今後の検討課題である. </p><p>【結論】</p><p> 施設に入所している認知症を有した超高齢者の筋肉量、脂肪量は維持されている. </p><p>【倫理的配慮】</p><p>本研究は国際医療福祉大学研究倫理審査委員会の承認 (承認番号21-Io-13)を得て実施した.本研究では対象者または家族に対して,文書および口頭による研究目的・計測方法を説明した.</p>

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