頚椎症性神経根症患者の座位姿勢に着目し、股関節の機能改善により疼痛が軽快した一例

DOI
  • 赤﨑 将太
    熊本リハビリテーション病院 リハビリテーション部 理学療法科
  • 田上 郷史
    熊本リハビリテーション病院 リハビリテーション部 理学療法科

抄録

<p>【はじめに】</p><p> コンピューター作業の不良姿勢が,頚部,肩関節,腰部などに生じる作業関連性疼痛と関連すると考えられている。今回,頚部・肩甲帯の介入では疼痛が軽快せず,座位姿勢に着目し股関節への介入で疼痛が改善した経験をした。 </p><p>【症例紹介】</p><p> 症例は,50歳代の男性。X月Y日に長時間のパソコン業務後より,頚部から左上腕に疼痛と痺れを認めた。当院受診し頚椎症性神経根症の診断で一時帰宅したが,Y+10日に疼痛増強し入院となった。頚部評価は,Y+17日より開始。関節可動域は,伸展20°,左回旋30°,左側屈10°。疼痛部位は,左頚部から左肩甲骨上部,Visual Analogue Scale(以下,VAS)67㎜,アライメントは,第5頚椎が第6頚椎に対して左側屈・左回旋位。整形外科テストは,Jackson・Spurling testが陽性,画像所見では,左第5,6,7頚椎の変性と椎間孔に狭窄を認めた。 評価結果より,長時間の座位作業で第5,6頚椎間にメカニカルストレスが生じ,症状を引き起こしたと考えた。 </p><p>【経過】</p><p> 入院時より,ベッドサイドで頚部以外への介入開始。Y+41日より リハビリテーション室へ出棟し, 頚部・肩甲帯への介入が開始となり症状は改善していた。しかし,座位時間が延長した5週目 は疼痛増強の訴えがあった。座位姿勢は,頚部軽度右側屈,体幹左側屈,骨盤左回旋と後傾,右側重心位。また, 座位に関わる股関節は,左屈曲70°で寛骨後方回旋が生じていた。そこで,座位時に股関節が対応できず不良姿勢となり頚部痛が生じていると考え,左股関節への介入とベッド周囲の環境調整で疼痛は軽快した。最終評価は,関節可動域は,伸展50°,左回旋50°,左側屈25°,左股関節は屈曲90°で寛骨後方回旋。疼痛部位は,頚部左側,VAS 5㎜。頚椎と座位のアライメントは修正され,整形外科テストは陰性となった。 </p><p>【考察】</p><p> 吉尾は,新鮮凍結遺体を用いた股関節中間位における屈曲角度は平均93度とし,また,上田らによると上半身質量中心位置を右側へ移動した場合,下位頚椎は左側屈・左回旋の複合運動が出現する,頚椎の複合運動が障害された回旋運動を行っていると,下位頚椎の椎間関節に過剰な運動が出現しやすいと報告している。 経過で記したように本症例は,座位時に左寛骨が早期に後方回旋し股関節由来の不良姿勢となる。この状態での作業が第5,6頚椎間の過剰運動となり,疼痛が生じたと考えた。これらのことから,座位の良姿勢や作業時の座面高は股関節の評価を基に対応するなど包括的にみる必要性が示唆された。 </p><p>【倫理的配慮】</p><p>発表にあたり患者へ内容について文書と口頭で十分説明し、対象になることについて書面にて同意を得た。</p>

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