RA患者に対する介護保険利用状況の変遷-過去10年間のTKA施行症例において-

DOI
  • 阿部 敏彦
    田窪リウマチ・整形外科 リハビリテーション室

抄録

<p>【目的】</p><p>関節リウマチ (RA)患者の介護保険利用においては平成 18年、21年、24年の3度の改正に伴い疾患の特異性による障 害予防としての生活支援や身体介護の複雑性、さらにはday serviceの内容に十分な理解が得られない場合が認められる。平成25年より令和4年の10年間当院にてTKA施行RA患者に対する介護保険の利用状況とその内容について調査したので報告する。 </p><p>【方法】</p><p>平成25年~令和4年にTKA施行したRA患者72名 (順次 TKA施行17症例) (全例女性、平均年齢69歳、平均罹病期間 13.5年)について調査した。家族構成は、 夫婦27名、夫婦+家 族14名、本人+家族19名で、独居12人、生物学的製剤使用27名であった。膝関節に関して、入退院時におけるROM、伸展 lag、10m歩行速度 (入退院時)、ADL評価 (入院時)、介護保険使用有無とその内容を調査した。ADL評価は、下肢 (起居・移動)32点、上肢 (食事、整容、更衣)60点、排泄16点、入浴16点とし合計124点とした。高得点ほど身体機能障害が軽度となる。介護保険の有無にて3群 (1群:退院時新規利用28名、2群:保険変更16名、3群:保険なし28名)に分類し比較検討した。 </p><p>【結果】</p><p>膝関節機能について入退院時屈曲角度、屈曲拘縮角度、伸展lagの比較は、屈曲角度127 (125)、屈曲拘縮角度4 (1)、伸 展Lag6 (4)となり屈曲角度のみ有意さが認められなかった。10 m歩行速度は入退院時で比較すると入院時10.6秒 (11.2秒)となった。介護保険使用 (28症例)内容は、福祉用具 (25)、住宅改 修 (25)、生活支援 (8)、身体介護 (3)であった。具体的サービス (症例数)は、福祉用具:シャワー椅子購入 (20)、電動Bedレンタル (5)、歩行器レンタル (3)、住宅改修における手すり設置場所:トイレ (14)、浴槽 (11)、浴室及び玄関 (6)、 廊下 (2)、段差解消 (9)、生活支援:週2回1H (4)、週1回1H (3)、身体介護 :週1回1H入浴介助 (3)であった。1群と3群における入院時 ADL項目比較では1群:下肢9.8点、上肢29.2点、排泄8.3点、入浴5.8点、合計53.1点で、3群:下肢9.8点、上肢28.4点、排泄8.4点、入浴4.5点、合計51.1点であった。入浴動作のみ2群間で有意な差が認められた。 </p><p>【考察と結語】</p><p>TKA施行RA患者に対する介護保険の利用状況とその内容に関して、身体機能評価のみならず福祉用具における関節保護、入浴とトイレの住宅改修、Life スタイル合わせた生活支援等より細かな観点から患者と向き合うべきである。 </p><p>【倫理的配慮】</p><p>本研究はヘルシンキ宣言に準じて、 診療記録より後方視的にデータ抽出を行い、個人情報が特定できないようにID化しデータ保存を行った。</p>

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