経カテーテル大動脈弁留置術後,入院・外来での理学療法により身体機能が向上し,術後6年間在宅生活を継続出来ている症例

DOI
  • 江渕 貴裕
    東京都健康長寿医療センター リハビリテーション科
  • 山口 真依
    東京都健康長寿医療センター リハビリテーション科
  • 寺澤 泉
    東京都健康長寿医療センター リハビリテーション科
  • 金丸 晶子
    東京都健康長寿医療センター リハビリテーション科

抄録

<p>【はじめに】</p><p> 経カテーテル大動脈弁留置術 (以下TAVI)は大動脈弁狭窄症 (以下AS)に対する治療で,従来の外科的治療と比較し低侵襲である.そのため,TAVIでは高齢でフレイル・サルコペニア・低 ADL状態の症例が多い.今回,TAVI施行後に入院での理学療法 (以下PT)と,それに引き続く外来PTによって身体機能が向上 し,術後6年間在宅生活を継続できている術前低ADL症例を報告する. </p><p>【症例紹介】</p><p> 78歳女性.134.0cm,47.5kg.X-2年,労作時呼吸困難・下腿浮腫が出現し近医にてフォローされていた.X年Y-3月より嘔気を自覚し,Y-2月当院消化器内科を紹介受診.その際,胸がつまった感じと以前からの労作時呼吸困難を訴え, BNP593.1pg/ml,心エコーにてEF49.0%,Vmax4.13m/s, AVA0.58cm2と壁運動低下,重度のASを認めた.検査・心不全コントロール目的の入院の後,X年Y月TAVI目的で入院となった.入院前は夫,孫と三人暮らし.要介護2,トイレ歩行で息切れあり.エレベーター無しの集合住宅3階に居住しており,強い息切れを認めながら介助で階段昇降していた.術前の握力は11.7/11.3kg,SPPBは3点,最大歩行距離は独歩13m・シルバーカー歩行30mでBorg17の息切れあり.四肢骨格筋量は 4.8kg/m 2とサルコペニア状態であった. </p><p>【経過】</p><p> TAVIは経大腿アプローチにて施行され,術後PTはバイタルサイン・息切れなどに留意しながら歩行練習,筋力トレーニングを中心に実施した.POD1サークル歩行器歩行開始.POD7シルバーカー歩行50m.POD20地域包括ケア病棟へ転棟,シルバ ーカー歩行200m,階段昇降練習開始.POD30~40嘔吐が頻回にありPT中断となったが,POD61に自宅退院となった.退院時のSPPBは8点,6分間歩行は230m (シルバーカー),階段昇降が見守りで可能となった.その後,外来PTを週3回,POD149まで継続,デイケアを導入し終了となった.TAVI施行から6年経過した時点で要介護2,週5日デイサービス利用.気管支炎で 3日間入院したのみで,他入院歴なく在宅生活を継続できている. </p><p>【考察】</p><p> TAVIの特徴の一つに術後入院期間が短いことが挙げられるが,低ADL症例に対しては入院による集中的なPTを実施し,ADLに 変化が出るレベルまで改善させることが重要であると考える.また,本症例ではTAVI後のPT終了後もデイケアで外出と運動 の機会を確保し,身体機能の維持に努めたことが長期間ほぼ入院せずに在宅生活を継続出来ている大きな要因であると考える. </p><p>【倫理的配慮】</p><p>症例には書面にて説明し,同意を得た.</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ