大動脈解離術後の通所介護利用者に対し、二重積屈曲点を用いた運動療法を行った一考察

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抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p> 大動脈解離術後は血圧管理を重視するあまり、過度な安静によるサルコペニアを合併する場合が多い。特に、高齢者でその傾向が強く、通所介護利用者においても適切な負荷設定が求められるが、機器設備の乏しい通所施設で十分な運動療法が出来ているとは言い難い。 今回、大動脈解離術後でサルコペニアの合併や運動耐容能低下を認める通所介護利用者に対し、二重積屈曲点 (DPBP)を用いた運動療法と自主運動指導の結果、身体機能改善が認められたので報告する。 </p><p>【方法】</p><p> 症例は大動脈解離術後、大動脈瘤のある80歳代女性。介護度は要支援2、当所を週2回利用されている。主治医から1日40分の散歩を推奨されているが息切れや疲労感から実施できず、運動は体操のみであった。 2022年〇月上旬に初期評価を実施した。握力(右/左)は15.0kg /13.0kg、体成分分析装置 (In BodyS10)によるSMIは4.9kg/m²、 SPPBは9点でサルコペニアを認めた。6分間歩行試験 (6MWT) は295mであった。 DPBPの検出は自転車エルゴメーター (KONAMI社製エアロバイクEZ101)にて多段階漸増負荷試験を用い。ウォーミングアッ プで2分間漕いだのち、1分毎に負荷を1増加させた。収縮期血圧と脈拍は漸増負荷開始後30秒毎に測定し、その積である二重積 (DP)を求めた。DPBPの決定は籾山ら先行研究より経皮的変化に対してグラフ上の視覚的に判断できる変曲点をDPBPとし、運動負荷試験開始から1分30秒経過時点で確認された。 利用日は座位・立位での体操を2回、レジスタンストレーニングを20分、自転車エルゴメーターでの有酸素運動を20分実施した。運動強度はDPBPと自覚的負荷強度を用いた。利用日以外は散歩、エルゴメーター、立位体操の3種類を実施した。 </p><p>【結果】</p><p> 2023年〇月上旬に最終評価を行った。握力(右/左)は18.0㎏ /15.0㎏、 体成分分析装置によるSMIは5.0kg/m²、SPPBは10点でサルコペニア重症度の改善を認めた。6MWTは352m、 DPBPは運動負荷試験開始から3分経過時点で確認され、運動耐容能の改善を認めた。 </p><p>【考察】</p><p> 大動脈解離術後でサルコペニアの合併を認める通所介護利用者において、DPBPを用いた運動療法で身体機能の改善および ADL向上が認められた。嫌気性代謝閾値と相関を認めるDPBPを用いることで、十分なリスク管理の元、適切な運動強度での運動療法が実施できたと考える。今後も、運動療法を継続することで血圧の安定を図り、大動脈解離の再発予防に努める。 </p><p>【倫理的配慮】</p><p>本研究はヘルシンキ宣言に従い倫理と個人情報に配慮し、口頭での説明と書面にて同意を得て実施した。</p>

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