高齢者の転倒予防のための足部ケアによる身体機能への影響

DOI
  • 山下 知子
    東都大学 幕張ヒューマンケア学部 臨床工学科
  • 山下 和彦
    東都大学 幕張ヒューマンケア学部 臨床工学科

抄録

<p>【はじめに・目的】</p><p>高齢者の転倒骨折が課題である.転倒骨折 は要介護要因であるため,転倒予防の教室等が行われているが,定量的な評価は十分ではない.一方,いつまでも自分の足で歩き続けるためには足部と足爪が重要となるが,外反母趾や巻き爪など問題を抱えている高齢者が多く存在する.足部や足爪に問題があると,足指の機能低下により身体機能の低下および転倒リスクが高まることが報告されている.そこで本研究では, A市の病院,地域包括支援センター,高齢者施設と連携し足部 ケアを行うことによる身体機能の改善および行動の変化を定量的な観点から調査することを目的とした. </p><p>【方法】</p><p>対象者は身体機能が低下した要支援,要介護者を含む高齢者74名 (83.0±7.5歳)である.計測は足部ケア介入前と介入後に実施した.計測項目は転倒予防の観点から,下肢筋力 (足指力,膝間力)と足圧分布,重心動揺 (CoPの面積,前後方向の動揺範囲 (AP (ML))等)とした.また,介入前後の足部や膝の痛み,心理的変化を捉えるためのアンケート調査も実施した. </p><p>【結果】</p><p>介入により巻き爪などの足爪の状態は改善した.その結果,下肢筋力は1.1~1.2倍向上し,転倒リスクの低下が確認できた.足圧分布では足指の床面への接地により,前後方向の動揺範囲が減少し,バランスのよい立ち方への変化が確認できた.一方,セルフケアの実施,友人との趣味活動,ボランティア活動など積極的な社会参加が見受けられ,気持ちの面での変化も認められた. </p><p>【考察・結論】</p><p>足部に関心を持ちセルフケアに取り組んだ結果,足指の可動域の向上,気持ちが前向きに変化し,下肢筋力や足 圧分布の改善につながった.さらに,足部の痛みや足爪の見た目の改善により,自らも社会の役に立ちたいなど気持ちの変化が表れた.また,計測デバイスを用いることで,転倒予防の効果を定量的に示すことできた.以上より,足部ケアは身体機能の改善および歩行機能の向上に有効であり,気持ちの面でも前向きな行動変容を促すことに有効であることが示唆された. </p><p>【倫理的配慮】</p><p>本研究は,東都大学の研究倫理審査委員会の承認を得て行った (承認番号:R0309).対象者は実験開始前に説明を受け,同意書に署名を行った.</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ