建設業に関わる現場作業員の身体的特性と労働生産性に関する探索的調査

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抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p> 建設業の現場では身体的負荷の高い作業を行っている労働者 (以下、現場作業員)が多いと考えられ、同業界で最も多い疾患は腰痛であることが報告されている。腰痛をはじめとした身体の不調は、現場作業員の運動機能や労働生産性に影響を与える可能性がある。そこで今回、建設業における現場作業員の腰痛の程度、運動機能、労働生産性の評価を行い、これらの関係を探索的に検証した。 </p><p>【方法】</p><p> 対象は現場作業員男性14名 (年齢41.3±13.6歳)とした。腰痛 の評価にはNumerical Rating Scale (以下、NRS)を用いた。運動機能の評価にはロコモティブシンドローム (以下、ロコモ)の判定で使用される立ち上がりテスト (0~8のリッカートスケール)、 2ステップテスト (2歩幅cm/身長cm)、ロコモ25を用いた。ロコモ陽性判定はロコモ度1~3に該当する範囲とした。プレゼンティズムの評価にはWHO Health and Work Performance Questionnaire Japanese edition (以下、WHO- HPQ)、ワークエンゲージメントの評価にはUtrecht Work Engagement Scale (以下、UWES-9)を用いた。腰痛NRS、ロコモ25、WHO-HPQ、 UWES-9それぞれの関連性を線形回帰より検証した。統計処理はR4.2.3を使用し、有意水準は5%とした。 </p><p>【結果】</p><p> 腰痛NRS:5.6±2.5、立ち上がりテスト:6.9±1.5、2ステップ値:1.7±0.1、ロコモ25:8.7±5.7、絶対的プレゼンティズム:6.9±2.0、UWES-9:4.5±1.1であった。なお、ロコモ25より9名がロコモ該当者 (ロコモ陽性率64%)であった。腰痛を目的変数、ロコモ25を説明変数とした単回帰分析では、係数 0.4 (p<0.01)、切片2.5 (p<0.01)であった。UWES-9を目的変数、ロコモ25を説明変数とした単回帰分析では、係数-0.1 ( p<0.05)、切片5.4 (p<0.01)であった。その他の項目で有意な関連はみられなかった。 </p><p>【考察】</p><p> 建設業の現場作業員ではロコモ25と腰痛NRS、UWES-9とロコモ25に有意な関連がみられた。一方、UWES-9と腰痛NRSに有意な関連はみられなかった。ワークエンゲージメントには腰痛だけでなく、他の身体部位の痛みも関連する可能性があると考えられた。 </p><p>【倫理的配慮】</p><p>本研究は現在所属先の倫理委員会の承認を得て行った (承認番号2026)。ヘルシンキ宣言に基づきすべての被験者には書面にて研究の意義、目的等について十分な説明を行い、研究参加に関する同意を得て研究を実施した。</p>

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