急性期病院における二次骨折予防について

DOI
  • 加藤 啓祐
    慶友整形外科病院 健康寿命延伸センター
  • 岩本 潤
    慶友整形外科病院 健康寿命延伸センター

抄録

<p>【はじめに】</p><p> 平均寿命の将来推計は今後も増加傾向であり、「人生100年時代」と呼ばれるかつてない超高齢社会を迎えようとしている.当院のある群馬県東部に位置する館林市も高齢化率が28.7%と高齢化率の上昇が懸念され、今後も高齢化対策が重要な課題とされている.当院では、健康寿命の延伸を目的に2017年に健康長寿外来を開設した.その後、骨脆弱性骨折の1つである大腿骨近位部骨折に対する二次骨折予防を目的に、2019年10月より骨粗鬆症リエゾンサービス (FLS)を立ち上げた.FLSは骨折の整形外科的治療と共に骨粗鬆症治療を急性期病院から行うことが重要とされ、薬物治療とともに多職種の専門職が直接患者へ介入を行っている.今回骨粗鬆症治療開始率について年次的変化について検討する. </p><p>【対象】</p><p> 対象は当院に大腿骨近位部骨折で手術治療を行った患者でFLSに同意が得られた者.期間はFLS導入前の2017年1月~2018年 12月,FLS介入直後の2019年10月~2020年3月を期間1とし, 2020年4月~2022年3月を期間2,2022年4月~2023年2月を期間3とする.各期間における大腿骨近位部骨折後骨粗鬆症治療開始率について算出する. </p><p>【結果】</p><p> FLS介入前の骨粗鬆症治療開始率は83名中17名 (20.5%),期間 1では36名中18名 (50%),期間2では204名中81名 (39.7%),期間3では75名中40名 (53.3%)であった. </p><p>【考察】</p><p> 大腿骨近位部骨折後の骨粗鬆症治療開始率はFLS介入後改善が みられた.期間2では介入率の低下が見られた,これは COVID-19感染流行の影響によるものが考えられ,面会制限等により患者本人以外への直接的な治療説明が不十分であった事が要因と考えられる.また,期間3では改善が見られているが,これは二次性骨折予防継続管理料の新設が影響していると考えられる.管理料が算定できるようになったことだけでなく, FLS介入のエビデンスが裏付けされたことでもあり,整形外科医への大きな働きかけにも繋がった.今後も治療開始率の改善とともに治療継続率の向上にも取り組んでいく. </p><p>【まとめ】</p><p> 当院における大腿骨近位部骨折後の骨粗鬆症治療開始率について検討した.FLS介入後骨粗鬆症治療開始率は向上し,二次性骨折予防継続管理料の新設は大きな影響を与えたことが示唆された.</p>

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