健康経営度調査を用いた健康経営に関わる理学療法士の普及実態

DOI
  • 川村 有希子
    株式会社三菱総合研究所 イノベーション・サービス開発本部
  • 佐藤 友則
    独立行政法人労働者健康安全機構 東北労災病院治療就労両立支援センター
  • 岡原 聡
    大阪急性期・総合医療センター 医療技術部・セラピスト部門

抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p>近年、「健康経営」が普及しており、 2016年より開始した健康経営優良法人認定制度は、申請数が 年々増加している。企業の労働者の健康・安全等を支援する産業理学療法については、2013年に日本産業理学療法研究会前身である産業理学療法部門が設置され、普及が推進されてきた。一方、これらの実態について定量的な報告はこれまで少なく、定点的評価を用いた実態把握が、活動の振り返りおよび今後に向けて重要であると考えられる。そこで本研究では、健康経営に関わる理学療法士の普及実態について検討した。 </p><p>【方法】</p><p>経済産業省が公開している「健康経営度調査」のオープンデータを利用した。対象年は、設問「健康経営の推進の専門職の担当者の人数をお答えください。」の選択肢に「理学療法士」が含まれる2019年~2021年の3カ年とした。分析は、理学療法士を回答した企業数および全回答企業に対し占める割合の変化を確認し、それらの中で申請企業の業種を「医療・社会福祉法人、保険者」と「それ以外の業界」に分け、同推移、および「それ以外」が占める割合等を比較した。また、回答企業の中で「医療・社会福祉法人、保険者」の申請割合の伸び率を確認した。 </p><p>【結果】</p><p>健康経営度調査にて、健康経営推進担当者として理学療法士を回答した企業数は2019年:53社 (全体の2.3%)、2020年:79社 (同3.1%)、2021年:130社 (同4.5%)と年々増加が みられた。さらに「医療・社会福祉法人、保険者」「それ以外 」に分けた集計でも、いずれも経年増加がみられた。「それ以外」に該当する企業の比率は、2019年:52.7%、2020年: 54.3%、2021年:58.4%へ推移した。一方、全回答企業の中で「医療・社会福祉法人、保険者」が占める割合は、増加傾向はみられなかった。 </p><p>【考察】</p><p>本結果より、健康経営度調査の回答企業において、健康経営への理学療法士の関与の増加が認められた。一方で、理学療法士が多く所属する医療・社会福祉法人等の申請数増加に伴う影響ではないことも明らかとなった。本調査は、健康経営に関わる理学療法士の実態および普及度合いの定点把握に有用であると考えられる。ただし本調査の計測値は、理学療法士在籍の企業数であることから、理学療法士が外部から介入した実態については把握できない点は、注意すべきである。 </p><p>【倫理的配慮】</p><p>本データの利用については、経済産業省が公開する個票が特定できないオープンデータを利用した。また、個人利用にあたり事前に問題がないことを経済産業省 (委託先:株式会社日本総合研究所)に確認した。</p>

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