当院介護・看護職員に対する職業性腰痛予防に向けた実態調査

DOI
  • 田中 亮人
    医療法人社団 朗愛会 こが病院 リハビリテーション科訪問リハビリテーションしらかば
  • 川又 華代
    中央労働災害防止協会 健康快適推進部
  • 加藤 芳司
    名古屋女子大学 医療科学部

抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p>職業性疾病のうち,職場での腰痛は6割を占める労働災害である.特に社会福祉施設での腰痛発生件数は増加し続けています.その要因は,介護作業姿勢や精神的なストレスも腰痛悪化に繋がると報告されている.当院では,昨年 12月から理学療法士も衛生管理者に選任され,職員の腰痛予防に取り組む事となった.本調査の目的は,腰痛の割合,原因を探ることである. </p><p>【方法】</p><p>当法人の介護保険サービス事業所 (訪問看護,訪問介護,通所サービス,通所リハサービス,入所サービス)に所属する,看護・介護職員62名を対象に記名式アンケート調査を実施した.調査内容は,基本情報,腰痛の有無・仕事や生活への支障の有無,特異性腰痛,Somatic Symptom Scale-8 (以下 SSS-8),STarT Back スクリーニングツール (以下SBST),腰痛 リテラシーとした.得られたデータは単純集計を行った. </p><p>【結果】</p><p>調査回収数は62名 (看護職14名,介護職45名)であった.腰痛を有する職員は85%,仕事や生活への支障がある者は 35%であった.身体的負担は,移乗動作・入浴介助・排泄介助の順に多かった.精神的負担により,身体の不調として高度に身体化されている職員は25%存在した.また,腰痛に関連する心理的要因として,30%が恐怖回避思考や不安があった.さらには腰痛リテラシーが低い結果となった. </p><p>【考察】</p><p>先行研究では,介護職員の腰痛有訴率は57.5%~78.9 % (得平ら2004,澤田ら2007,上田ら2012)と半数を超えて いる.松平 (2009,2010)は,腰痛が慢性化する要因として,頭痛などの身体化症状が強い事,仕事に支障をきたす非特異性腰痛の危険因子は,作業動作などの人間工学的な要因だけでなく,職場でのストレスに代表される心理・社会的な部分の改善も必要と報告している.菅野 (2011)は腰痛原因を,作業因子,環境因子,個人因子,心理的要因に大別したが,要因は複数が混在していると報告している. </p><p>【結論】</p><p>以上から,本研究においても同様の結果となり,作業動作・環境,腰痛教育,心理的なアプローチが必要と考える. </p><p>【倫理的配慮】</p><p>本研究はヘルシンキ宣言に則り,研究の目的や方法について説明を十分に行い,書面にて同意を得て実施した</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ