当施設の看護・介護職員における腰痛の特徴と腰痛対策に関する課題についての検討

DOI
  • 榊原 和真
    医療法人並木会 介護老人保健施設メディコ阿久比 リハビリテーション科
  • 田中 誠也
    国立長寿医療研究センター 先端医療開発推進センター

抄録

<p>【はじめに】</p><p>腰痛は第3次産業における職業性疾病の7割を占め,看護・介護の現場でもその対策が重要な課題となっている.職 業性腰痛に関する課題を解決すべく,当施設では業務改善活動の一環として腰痛対策プログラムを実施してきた.今回我々は,当施設に所属する看護・介護職員を対象に実施した腰痛に関するアンケート調査の結果を解析し腰痛の特徴を明らかにするとともに,今後の腰痛対策への課題について検討した. </p><p>【方法】</p><p>対象者は,2019年4月に当施設に勤務していた看護・介護職員104名のうち,アンケート調査に回答のあった96名(回答率92%).アンケートの結果から現在の腰痛の有無およびその程度(Numerical Rating Scaleを使用し,0:痛みなし~10 :最大の痛みの11段階評価),腰痛の既往の有無,年齢・性別などの背景情報,ワーク・エンゲイジメント(ユレイヒト・ワークエンゲイジメント尺度3項目版,UWES)や現在実施している腰痛対策について抽出した.アンケート実施時に腰痛を認めた職員を「腰痛あり群」,認めなった職員を「腰痛なし群」とし,2群間でUWESおよび腰痛対策の実施割合について比較検討した. </p><p>【結果】</p><p>アンケート実施時に腰痛を認めた職員は58名 (60%) で,腰痛の程度は3.7±1.9.腰痛の既往がある職員は88名 (92 %)であった.合計UWESは腰痛あり群で7.1±3.3,腰痛なし群で9.0±3.7で,腰痛あり群の方が有意に低値であった (p=0.017).腰痛対策の実施割合に関して,腰痛あり群で有意に割合が高かった項目は「コルセットの使用 (p<0.001)」,「介助時の姿勢への注意 (p=0.039)」,「接骨院への通院 (p=0.021)」で,「筋力トレーニング」,「ストレッチ」,「介助時の福祉用具の使用」,「利用者の残存能力の利用」,「普段の姿勢への注意」,「介護方法の勉強」,「たばこを控えている」,「長時間同じ姿勢をとらない」,「ストレスを溜めない」,「病院への通院」,「マッサージ」では有意差を認めなかった.また,腰痛あり群において,特に腰痛対策を行っていない職員は9名 (16%)存在していた. </p><p>【考察】</p><p>腰痛を有する職員は半数を超え,腰痛はワーク・エンゲイジメントに関連している可能性が示唆され,看護・介護職員の腰痛対策の重要性を示すものと考える.また,腰痛を認めた職員が行っている腰痛対策は限定的で,介護方法に対する知識や普段の生活・業務において留意すべき事項についての教育が必要であると考えた. </p><p>【倫理的配慮】</p><p>本研究は,既存情報のみを用いた研究であるため,国立長寿医療研究センター倫理・利益相反委員会で審査・承認され,各研究機関の長からの許可を得た上で実施した (1339・1340).研究対象者には,本研究に関する情報を公開し,拒否する機会を提供した.</p>

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