理学療法士の運動指導により病院職員の運動習慣者が増加した取り組み―特定保健指導改定に向けて―

DOI
  • 髙橋 廣彰
    医療法人徳洲会 札幌徳洲会病院 リハビリテーション科
  • 垣見 尚宏
    医療法人徳洲会 札幌徳洲会病院 リハビリテーション科

抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p> 特定健診・保健指導は令和6年度の改定から成果を重視する方針に沿い,アウトカム評価が導入される.腹囲・体重の減少や行動変容(運動習慣など)が主要アウトカムのため,より効果的な食事・運動指導が重要だが,主な担い手の保健師・栄養士の約半数が運動指導に困難さを感じていると報告されている. 当院には安全衛生委員の理学療法士(以下PT)が健康管理として病棟職員に運動指導を行い,運動習慣者が増えた事例がある.そのため,保健師による職員への運動指導をPTが支援する予定である.本事例を通じ,PTによる運動指導が病院職員への特定保健指導に寄与できる可能性を検討したため報告する. </p><p>【方法】</p><p> 運動指導の対象は単一病棟の看護師33名,介護福祉士7名,クラーク1名の計41名(女性34名,男性7名,20代:15名,30代:8名,40代:14名,50代:4名).令和4年11月~12月に1人当たり 30分間で1回,PT2名が個別に問診と機能評価に基づいた運動を提案した.問診で身体の悩みと運動習慣を確認し,機能評価で柔軟性と筋力に加え,個別に必要な評価を行った.運動は用意したストレッチ・筋力トレーニング・体操から参加者が選択した. 実施後は評価結果と運動を載せたリーフレットを渡し,院内メールで定期的にフォローし,2ヶ月後に運動習慣をアンケートで確認した.なお,運動習慣は「週2回, 30分以上運動している」と定義した.統計解析はGraph Pad Prism6を用いてFisherの正確確率検定で検討し,有意水準は5%未満を統計学的有意とした. </p><p>【結果】</p><p> 運動指導には41名が参加し,アンケートは36名から回答を得た(有効回答率:87.8%,女性:30名,男性:6名,20代:10名,30代:8名,40代:13名,50代:5名).運動習慣者は運動指導前:3名から2ヶ月後:12名に有意に増加した(p<0.01). </p><p>【考察】</p><p> 結果より,PTによる運動指導は運動習慣の行動変容を促せる点で,病院職員への特定保健指導に寄与できる可能性があると考える.標準的な健診・保健指導プログラムより,保健指導は自身の健康に関するセルフケアができることを目的としているため,一方的な方法の提示ではなくカウンセリング要素を取り入れることが必要なことから,本事例でも対象者の悩みに沿い,機能評価に基づいた上で,自身で運動を選択できるように運動指導したことが有効だったと考える. </p><p>【倫理的配慮】</p><p>本報告はヘルシンキ宣言に基づき行った.アンケートは個人の特定ができないよう無記名とし,文書にて趣旨等を説明し回答によって同意とした.</p>

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