サービス付き高齢者向け住宅の機能と役割について-入居に至る背景・生活サービス・健康ニーズ-

DOI
  • 佐々木 聖子
    株式会社メディカルシステムネットワーク 開発事業本部
  • 山田 英人
    株式会社メディカルシステムネットワーク 開発事業本部
  • 枝廣 誠彦
    株式会社メディカルシステムネットワーク 開発事業本部

抄録

<p>【目的】</p><p> サービス付き高齢者向け住宅(以下サ高住)は、高齢者の自立生活支援に有効に機能しているか、入居に至る背景・生活支援サービス・健康ニーズの観点から考察することを目的とした。 </p><p>【方法】</p><p> ①入居時自由記述式アンケート(2019.8)②夏季冬季室内環境調査(2020.8~2021.1)③経過記録(2020.12)を質的に分析し考察した。 </p><p>【結果】</p><p> ①入居半年未満の入居者96名(78世帯、道外6名、市外17名、 区外19名)入居契機:配偶者の疾病や死(21回答)。生活の困難さ:食事準備(25回答)雪かきや冬季外出(14回答)体力低下(28回答)。サ高住の情報収集:子供(26回答)、自分(14回答)入居中の知人(3名)。施設選択の決定打:土地勘・子供・友人と会える距離、交通の利便性、通院。入居後の満足感:暖かい家・職員・食事・医療・頼れる人・情報が得られる。②夏季エアコン設定26 ℃冬季22℃、冬季実測値21 ℃窓側19℃で室内、室内中心部温度に問題はなかった。③A施設76名・平均年齢87.6歳・平均介護度 0.9、B施設85名・平均年齢86.5歳・平均介護度0.87。関わりによる生活支援サービスを記した言語をプリコーディングし、 6つの大カテゴリーを生成した(傾聴、不確かさへの対応、調整、情報提供、声をかける、一緒に探す) 。入居者は「立ち話し」も利用して情報を得て、健康不安を話すことで病院選択や受診を判断していた。自分の行動や思考が「不確か」な人には、職員が行動を補完して尊厳を維持していた。経過記録に健康増進を望む表現はなかったが不調や健康問題解決の相談をしていた。 </p><p>【考察】</p><p> 職員との立ち話しはコンパニオンシップとして機能し孤独感の軽減が期待できる。食事の支度や雪かきからの解放・寒暖差のない居室は 生活の困難さを軽減する。体の不調や健康問題の相談は「何かあったとき」に「頼れる人」が傍にいることを示し、望ましい健康行動へのニーズを満たすと考えられる。一方、43%が住み慣れた地区から離れて入居し、子や友人がいれば住み慣れた土地でなくても良いとする傾向が伺えた。子世代が入居に向けて具体的に行動し、子の決定に従う傾向は子世代へのアプローチの必要性を示している。 </p><p>【結論】</p><p> サ高住は身心の機能低下を憂慮する高齢者の不安を軽減する。日時の制約なく助けを求めることができ、望ましい健康行動への支援を受けることができる。「かかわりによる生活支援サービス」の提供と職員とのコンパニオンシップはサ高住の役割と考える。 </p><p>【倫理的配慮】</p><p>使用したデータは当該施設運営のために集積したもので、個人および施設の匿名性に配慮し、研究目的以外に使用しないこと、研究終了とともに廃棄することを関係上長に説明し口頭による許可を得た。</p>

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