年齢と経験の違いがコーピングに関するメタ認知能力に与える影響

DOI
  • 西川 正一郎
    医療法人大植会葛城病院 リハビリテーション部理学療法課

抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p> 自己のキャリア形成において、コーピングに関するメタ認知は、年齢や経験年数によって影響を受ける可能性があることが考え られる。そこで、今回コーピング尺度を用いて年齢や臨床経験の違いがメタ認知能力に影響を及ぼすか調査を行ったので、ここに報告する。 </p><p>【方法】</p><p> 対象は当院リハスタッフ57名とした。調査は基本情報を年齢、経験年数、学会発表歴について質問とした。コーピング尺度評 価には、SCMS (自己統制と管理のコーピング尺度日本語版)を用いて評価を行った。SCMSは自己客観視 (6問)、自己評価 (5問)、自己強化 (5問)で構成されている。解析方法は経験年数の 1~9年の10年未満 (以下若手)と10年以上 (ベテラン)の2群で比較を行い、Mann-WhitneyのU検定にて統計処理を行った。尚、危険率はP>0.05とした。回答収集はインターネット回答フォームを用いた。 </p><p>【結果】</p><p> 有効回答者は35名 (回答率:61%)。回答者の平均年齢は29.3 ±8.3歳 (若手15名、ベテラン20名)、平均経験年数は7.3±5.9年 (若手3.6±2.7年、ベテラン14.6±3.2年)であった。SCMSの結果は、自己客観視:若手22.6±4.1点、ベテラン26.8±3.6点 (P>0.01)、自己評価:若手15.3±3.9点、ベテラン11.4±4.5点 (P>0.02)であり、自己客観視と自己評価の項目で、若手とベテランに有意差が認められた。自己強化は若手群22.9±3.7点、ベテラン群24.2±3.4点 (P=0.3)と有意差を認めなかった。学会発表有無は、ベテランの回答者全員が有り、若手群は15名中8名に発表経験が有った。若手内で発表経験の有無で二次調査を行ったが有意差は認めなかった。 </p><p>【考察】</p><p> SCMSの結果において、自己客観視の項目はベテラン群の点数が高く、自己評価の項目はベテラン群の項目は点数が低い結果となった。今回の結果より、経験年数が増すにつれ、自分を俯瞰してみる能力が高くなると考えられる。自己評価は、目標に関する達成などが設問内容となっており、自己目標の達成経験が左右され、ネガティブな設問項目であるため、目標達成の経験を多く有するベテランが低くなる結果と考えらえる。自己強化に関しては、経験年数に関係なく個々のモチベーションなど個人因子に左右される項目であることが推察される。 </p><p>【結論】</p><p> 今回、コーピング尺度であるSCMSを評価することで、経験年数で得らえる目標に対する視点や思考について調査することができた。 </p><p>【倫理的配慮】</p><p>参加者に対して、内容、機密性、匿名性などについて説明を行い、参加者のプライバシーを尊重するために個人情報は調査目的以外に使用されないように個人情報保護法に基づいて情報を扱い、実施することについて参加者から同意を得た。</p>

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