がんリハビリテーションを施行した患者の入院時ADLと転帰先との関連について:DPCデータ解析

DOI
  • 木田 拓斗
    札幌医科大学大学院 保健医療学研究科
  • 井平 光
    札幌医科大学大学院 保健医療学研究科 札幌医科大学 保健医療学部理学療法学科 国立がん研究センター がん対策研究所
  • 小塚 直樹
    札幌医科大学大学院 保健医療学研究科 札幌医科大学 保健医療学部理学療法学科

抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p>がん患者に対する入院中のリハビリテーションにより、日常生活動作 (Activities of daily living: ADL)が改善することが報告されている。入院中のADLを把握する一つの方法として、診断群分類 (Diagnosis Procedure Combination)による退院時サマリー (様式1)を含むデータ、いわゆるDPCデータが用いられている。しかし、DPCデータを用いた研究では、入院時ADLと転帰先との関連について検討したものは少ない。本研究の目的は、がんリハビリテーションを施行した患者の入院時ADLと転帰先との関連を明らかにすることとした。 </p><p>【方法 】</p><p>メディカル・データ・ビジョン株式会社が提供する、 匿名加工情報として集められたDPCデータを用いた。本研究では、 2008年4月~2019年11月の間に、一度でもリハビリテーションを実施した患者331,513人から、様式1の主傷病名が、悪性新生物 (ICD10コード「C00-C97」)で、かつ必要情報に欠損のなかった19,554人を対象とした。入院時ADLは様式1から得られたBarthel Indexを用いて、自立と非自立に分類した。アウトカムは、自宅への退院 (退院)、他病院・診療所への転院 (転 院)、施設への入所 (施設入所)、死亡の4つの転帰先とした。ロジスティック回帰分析を用いて、退院を基準として、転院、施設入所、死亡について、入院時ADLの自立によるオッズ比 (OR)を算出した。調整変数は、年齢、性別、BMI、がんのステージ分類とした。 </p><p>【結果】</p><p>19,554人のうち、退院は18,977人、転院は526人、施設入所は43人、死亡は8人だった。ロジスティック回帰分析により、歩行の非自立は、退院と比較して、転院 (OR :5.65, 95% CI:4.60-6.95)、施設入所 (OR:11.97, 95%CI:6.22-23.00)、 死亡 (OR:16.25, 95%CI:3.50-75.44)のオッズ比が高いこと が示された。ADL10項目中で最も点推定値が高か ったのは、トイレ動作であり、転院 (OR:6.11,95%CI:4.93-7.56)、施設入所 (OR:14.49,95%CI:7.49-28.01)、死亡(OR:20.42,95% CI:4.32-96.48)であった。 </p><p>【考察】</p><p>本研究では歩行やトイレ動作をはじめとした全ての項目で、入院時のADLが自立していないことが、転院、施設入 所、および死亡のオッズ比が高いことと関連する結果となった。入院時ADLの評価によって、転帰先の予測などの一助となる可能性が示唆された。今後の展望として入院中のADLの変化と転機先の関連性を検討すること等が必要だと考えられる。 </p><p>【倫理的配慮】</p><p>本研究は当該施設による倫理委員会の承認を得て実施された。</p>

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