高齢者を地域活動へ促すための訪問支援の実際と課題

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抄録

<p>【背景】</p><p> 東京都荒川区(以下、荒川区)では、介護予防・日常生活支援総 合事業のサービスとして、理学療法士および作業療法士(以下、療法士)が関与する訪問支援が2種類展開されている。訪問介護員により訪問支援が継続されるサービスは、おうちでリハビリと呼ばれている。荒川区では生活行為に焦点を当てた支援を実施するために、地域包括支援センターと療法士が協力し、事業に関与する事業者も交えて意見交換や勉強会を行なっている。このような取り組みを通して生活行為への支援の質を高めているが、訪問介護員が実際に何を行い、そして、何に困っているのか明らかになっていない。そこで、今回、おうちでリハビリに関与する訪問介護員を対象に、生活行為の支援として何を実施しているのか、また、その際困っていることは何か、インタビューを通して検討した。なお、発表時には、荒川区での事業内容も交えて報告する。 </p><p>【方法】</p><p> 訪問介護員へのインタビューは、研究協力が得られた12名(男 3,女9)を対象に半構造化面接を実施し、質的内容分析の手法を 用いてまとめた。インタビューは各事業所内で実施し、1回あたりのインタビューは60分前後、分析時は共同研究者を含めた研究者3名で実施した。インタビューは、2つの話題が明らかになるように展開した。具体的には、生活行為を支援する際に実施していることは何か、そして、生活行為を支援する際に困っていることは何か、である。得られた結果を理解するために、作業療法の理論の一種であるPerson-Environment-Occupation model(PEOモデル)を利用し、得られた発言がどの構成概念に分類されるか検討した。 </p><p>【結果】</p><p> 訪問介護員は、生活行為への支援として「栄養面に配慮した献立を考える」「利用者や家族の希望や楽しみを取り入れる」「あらかじめ必要な道具や材料、援助の範囲と内容を確認する」といった11種類に分類される実践を行なっていた。一方、生活行為の支援時には「利用者の変化に援助内容を合わせることが難しい」といった12の困りごとを抱えていた。 </p><p>【結論】</p><p> 訪問介護員は、人の側面に対する評価や支援に限界があることが示唆された。今後、療法士が訪問介護員と共に生活行為への支援を実施するならば、人に関する評価や支援はより丁寧に情報提供する必要があると考えられた。 </p><p>【倫理的配慮】</p><p>本研究は、筆者所属大学の研究倫理審査の承認を受けている (承認番号:22034)</p>

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