慢性閉塞性肺疾患患者における呼吸サルコペニアの特徴

DOI
  • 川越 厚良
    市立秋田総合病院 リハビリテーション科
  • 岩倉 正浩
    市立秋田総合病院 リハビリテーション科
  • 古川 大
    市立秋田総合病院 リハビリテーション科
  • 解良 武士
    高崎健康福祉大学大学院 保健医療学研究科 東京都健康長寿医療センター研究所 研究所
  • 河合 恒
    東京都健康長寿医療センター研究所 研究所
  • 大渕 修一
    東京都健康長寿医療センター研究所 研究所
  • 菅原 慶勇
    市立秋田総合病院 リハビリテーション科
  • 塩谷 隆信
    秋田大学大学院医学系研究科 保健学専攻

抄録

<p>【はじめに】</p><p> 近年、呼吸サルコペニアという概念が提唱され始め、関連学会によるポジションペーパーにより新たな定義が発出された。本病態の条件にある呼吸筋力低下は様々な予後アウトカムの低下の原因となりうる。確定診断に要する呼吸筋量の測定が困難な場合は、全身性サルコペニアの有無で代用する病態も提唱されているが、慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者における筋量減少と呼吸筋力の低下の有無による臨床的指標の特徴についての現状のエビデンスは十分でない。 </p><p>【目的】</p><p>本検討は、COPD患者において、新しい定義に基づいた呼吸サルコペニアの実態と、その病態を伴う疾患特有の関連因子を探ることである。 </p><p>【方法】</p><p> 対象は47名の外来患者であり、筋量減少と呼吸筋力低下のないNormal群(19名)、筋量減少のみのMuscle wasting(MW)群(6名)、呼吸筋力低下のみのRespiratory weakness(RW)群(11名)、筋量減少と呼吸筋力低下がある MW+RW群(11名)の4群に分類された。各群の体組成や、呼吸機能、四肢筋力、歩行速度、運動耐容能、身体活動量、Mini Nutritional Assessment Short-Form(MNA-SF)、フレイルインデックスを比較した。さらに、筋量減少、および呼吸筋力低下の因子と各種指標との関連性を年齢、性別、対標準1秒量(%FEV1 )で調整した多変量回帰分析にて検証した。 </p><p>【結果】</p><p>群間比較として、BMIや, 予測肺活量(%VC), COPD Assessment Test(CAT), 6分間歩行距離(6MWD), 大腿四頭筋筋 力(QF), MNA-SF, フレイルインデックスの項目にて有意差が示された。Normal群と比較し、MW+RW群における%VC(β=-26, 95%CI; -39 to -13)や, CAT(β=7.1, 95%CI; 1.6 to 13), 6MWD(β =-164, 95%CI; -248 to -80), QF(β=-15, 95%CI; -24 to -5.8), フ レイルインデックス(β=0.87, 95%CI; 0.09 to 1.7)は有意な差がみられた。 </p><p>【考察】</p><p>当院安定期外来COPD患者においては半数近くが呼吸筋力低下を示しており、その内筋量減少を伴う例数と伴わない例数は同数であった。これは全身筋肉量の影響なしに横隔膜機能障害といった疾患特異的な機能低下の影響も同程度あると言える。また、呼吸筋力低下に加え、筋量減少が伴う病態は、年齢や病期を調整した上でも、予後関連指標の低下がみられ、特に6MWDへの影響が強いことが伺える。 </p><p>【結論】</p><p>当院安定期外来COPD患者における筋量減少と呼吸筋力低下の両因子を有する例は約4人に1人の頻度でみられ、主要な臨床的指標の低下と有意に関連することが示唆された。 </p><p>【倫理的配慮】</p><p>本研究に使用するデータ測定に関しては,市立秋田総合病院倫理審査委員会の承認を受けており(受付番号: 109),対象者にはデータの2次利用についての十分な説明を行い,書面同意を得て行った.</p>

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