なぜ留学するのか?

書誌事項

タイトル別名
  • Why do Japanese University Students Study Abroad?
  • Focusing on the Reproduction Strategy of “Global Human Resources”
  • ――「グローバル人材」の再生産戦略に着目して――

抄録

<p> 本稿の目的は,P. Bourdieuの文化的再生産論の視点から,「グローバル人材」の留学動機と地位達成との関連を明らかにすることである。<br> 労働市場のグローバル化に伴い,東・東南アジアの国々では留学を通じた高階層家庭の再生産戦略のトランスナショナル化が指摘されている。日本でもグローバル人材政策を背景に,留学がキャリア形成において重要視されるようになっている。しかし,日本において現出しつつある「グローバル人材」の留学を,出身階層や地位達成という視点から検討した研究は存在しない。<br> そこで本稿では38名の「グローバル人材」にインタビュー調査を実施し,以下の三点を明らかにした。第一に,「グローバル人材」の多くは社会経済的に恵まれた家庭環境にあり,家庭あるいは選抜的な学校への入学を経由しグローバル文化資本を獲得していた。第二に,留学を「普通の人」からの卓越化の手段として位置づけるものもいるが,多くは美的性向に基礎づけられた表出的な動機を強調し,留学が地位達成に影響しうることを認識しながらも,それらを動機として語るわけではない。第三に,自身の留学が自己実現に基づくものであると語ることで,意識的にせよ無意識的にせよ,地位達成の手段として留学する人からの卓越化をはかっていることを確認した。<br> 以上の知見を踏まえ,近年のグローバル人材政策によって,留学をめぐる階層格差や地位達成における不平等が拡大している可能性を指摘した。</p>

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参考文献 (8)*注記

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