権力と正統性に対抗する文化資本の可能性

書誌事項

タイトル別名
  • Possibility of Cultural Capital against Power and Legitimacy:
  • Reflective Reconstruction of Habitus as a Structuring Structure
  • ――構造化する構造としてのハビトゥスの反省的再構築――

抄録

<p> 本稿では,ブルデューの「権力と正統性の一般人間学」の基礎理論である教育社会学理論を象徴暴力論の視点から再構成したうえで,その象徴暴力によって成立する権力と正統性に対抗する「構造化する構造としてのハビトゥス」の生成条件としての文化資本の可能性を探求することを目的している。<br> まず,ブルデューの教育社会学理論が「精神構造と社会構造の再生産メカニズム」を解明課題としていることを確認したうえで,『再生産』が総合的人間学の確立にとって重要な著作であったことを指摘し,その中心的課題がハビトゥス論の確立にあったこと,同時にこの時点でのハビトゥス論には限界があったことを示唆した。次に,ブルデューの教育社会学の著作(『遺産相続者たち』,『再生産』,『国家貴族』)を象徴暴力論の視点から再構成したうえで,象徴暴力に対抗するハビトゥスを再構築するための文化資本の可能性について3つの論点を提起した。すなわち,①文化資本の平等な配分問題,②文化資本の変革問題,③文化資本の序列化への対抗問題である。最後に,これら3つの論点についてブルデューの見解を検討した結果として,以下の3点を導いた。①文化資本の配分による代理委任に対する抵抗と文化独占への闘争の可能性,②変革された文化資本の創出による文化的恣意性への対抗の可能性,③文化資本の序列化への対抗として教育・能力・成功形態の複数性の対置である。<br> 結論では,変革された文化資本の獲得は権力と正統性に対抗する批判的リテラシーの獲得を意味し,それは「構造化する構造としてのハビトゥス」の反省的再構築の可能性をもつことを示唆した。</p>

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参考文献 (5)*注記

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