屋久島と種子島におけるヤマモモ種子の二次散布者

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タイトル別名
  • Secondary seed dispersers of <i>Morella rubra</i> on Yakushima and Tanegashima islands

抄録

<p>要 約:霊長類や大型鳥類は、大型の種子や果実を持つ植物の唯一の種子散布者となり得るだけでなく、様々な植物の種子散布者となるため、人為攪乱によって大型動物が絶滅した空洞化した森林では、種子散布機能の崩壊が懸念されてきた。国内でも、ヤマモモの主要な種子散布者であるニホンザルが絶滅した種子島では、現在もニホンザルが生息する屋久島と比較して、ヤマモモの種子散布量が激減していることが報告されている。しかし、屋久島や種子島に生息するニホンジカや森林性野ネズミなどの地上性動物による二次散布については未だ明らかにされていない。本研究では、屋久島と種子島において、地上性動物によるヤマモモ果実・種子の利用の有無とその消費者を明らかにし、地上性動物による二次散布の可能性を検討することを目的とした。2022年と2023年の6月に、屋久島と種子島の各調査地で10地点に自動撮影カメラを設置し、実験的に設置したヤマモモ果実を訪れる動物種とその頻度を記録した。また、動画内で果実を食べているか、くわえている様子が確認できる個体は採食個体としてカウントし、採食果実数とともに記録した。その結果、屋久島では7種、種子島では10種の動物が観察され、ヤマモモ果実の採食が認められたのは、ニホンザル、ニホンジカ、ネズミ類(アカネズミ属)、タヌキ、ハシブトガラスの5種で、特に全体に占める割合が高かったのはニホンジカとアカネズミ属であった。ニホンジカはその摂食方法や糞粒のサイズから、ヤマモモ果実を種子ごと噛み砕いていると考えられ、ヤマモモ種子の二次散布に貢献している可能性は低いと考えられた。一方でアカネズミ属は、果肉やその中の種子をその場で食べるだけでなく、果実をくわえて持ち去る様子も確認されたことから、ヤマモモ種子を貯食していると考えられる。したがって、アカネズミ属は、特にニホンザルが不在の種子島で、ヤマモモ種子の二次散布者として重要な役割を果たしている可能性がある。今後、アカネズミ属の二次散布者としての役割を明らかにするためには、種子散布量、種子散布距離、散布された種子の生残率・発芽率などを総合的に評価していく必要がある。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390862623772305536
  • DOI
    10.18960/hozen.2316
  • ISSN
    24241431
    13424327
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

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