<研究論文>軍事技術をめぐるテクノ・ナショナリズム言説の構築過程とその特質 : 一九六〇年代ミリタリー雑誌『丸』の事例から

書誌事項

タイトル別名
  • <RESEARCH ARTICLE>The Emergence and Characteristics of a “Techno-Nationalistic” Discourse on Military Technology : A Case Study of the Military Magazine Maru in the 1960s
  • 軍事技術をめぐるテクノ・ナショナリズム言説の構築過程とその特質 : 一九六〇年代ミリタリー雑誌『丸』の事例から
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抄録

本研究は、戦後日本社会における「軍事技術」をめぐるテクノ・ナショナリズムの特質の解明を目指す研究である。先行する戦後日本のテクノ・ナショナリズム研究は、民生技術(家電、自動車、マイクロコンピュータ)における分析に偏重しており、軍事技術をはじめとした他分野におけるテクノ・ナショナリズムはほとんど等閑視されてきた。このため、現状の研究は民生技術のみから見た一面的なものに留まっており、テクノ・ナショナリズム概念について、科学技術の実態に即した立体的な把握が未だなされていないものと考えられる。  本稿の目的は、これまでほとんど注目されてこなかった軍事技術に関するテクノ・ナショナリズムの特質と内在するロジックを解明することである。  本稿では、上記の目的を達成するために、ミリタリー雑誌『丸』における軍事技術、特に旧日本海軍の代表的な技術開発分野であった戦艦造艦技術をめぐる一九六〇年代の言説を事例として取り上げ、言説分析を行った。  分析の結果、一九六〇年代の軍事技術をめぐるテクノ・ナショナリズム言説は、①軍事技術における目的と方法の切り分けと目的(=軍事)の透明化というロジック②技術開発における継承性の強調による歴史的記憶の喚起及び時間的連続感の強化③技術継承における軍民の連続性や軍事技術開発史・戦記のビジネス論的受容といった、軍事分野から民生分野への接続可能性が示されているといった特質を有していることが明らかになった。本稿で明らかになった知見を通じて、今後民生分野におけるテクノ・ナショナリズムとの比較や言説の布置関係の検討といった展開が可能になると予測される。

収録刊行物

  • 日本研究

    日本研究 68 45-74, 2024-03-29

    国際日本文化研究センター

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