兵庫県姫路市夢前町莇野,菅生川河床における白亜紀ペペライトの産状

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  • Field Occurrence of Cretaceous peperites distributed in Sugou River bed,Azono,Yumesaki town of Himeji City,Hyogo Prefecture, SW Japan

抄録

<p>はじめに 西南日本内帯には,白亜紀〜古第三紀の火成岩類が広く分布する.近畿地方西部に位置する兵庫県中〜西部地域では近年,産総研による5万分の1地質図幅作成に伴う研究の進展で白亜紀火山岩類が当時のカルデラ(コールドロン)を埋積し分布することが明らかにされてきた.当地域の白亜紀火山岩類は堆積盆の認定を基礎とした層序学的研究によって,各地で累層に区分されている(例えば,山元ほか,2000;山元ほか,2002;Yamamoto,2003;吉川ほか,2005;佐藤ほか,2016など). 表題地域はYamamoto(2003)が存在を指摘した径14×7kmの大型カルデラ内に位置し,カルデラ埋積火山岩が分布するが,その記載的特徴や成因は山元ほか(2002)による火山岩類の地質構造を重視した層序学的研究のほかに詳細な報告はない.また山崎図幅地域に分布するカルデラ埋積火山岩(七種山層(なぐさやまそう);山元ほか,2002)は隣接する龍野図幅地域(山元ほか,2000)や生野図幅地域(吉川ほか,2005)にまたがって分布し,その層序学的位置は,兵庫県中〜西部地域における白亜紀火成活動の対比や時空変遷を議論するうえで重要である.そこで本報告では当地域に分布する七種山層(山元ほか,2002)に産する,火山砕屑岩からなる母岩中に流紋岩質火山岩片が混在する岩相に対し,産状および岩石記載を行い,姫路市夢前町莇野付近における白亜紀ペペライトの産状学的特徴を報告する. 地質概要 本地域に分布する白亜紀火山岩類は七種山層(山元ほか,2000,2002)から構成される.七種山層は径14×7kmの大型カルデラを埋めた地層で厚さ約550mの部分が地表に露出する(図:山元ほか,2002をもとに作成).結果 記載と解釈 岩相:流紋岩質凝灰岩および凝灰質砂岩泥岩互層と流紋岩質火山岩片との混在相.産状記載:母岩の流紋岩質凝灰岩および凝灰質砂岩泥岩互層中に数㎝〜数10㎝の白色流紋岩石質岩片が混在する岩相である.流紋岩石質岩片の形状は楕円形〜レンズ状,不定形〜亜角礫状,ブロック状などさまざまである.流紋岩石質岩片には岩片の周縁に急冷縁が発達する場合や岩片内に岩片の伸長方向とは垂直な冷却節理が発達する場合がある.まれに先白亜系基盤岩類由来と思われる灰黒色泥質岩の小岩片を含む場合がある.この混在相の母岩は淡緑灰色基質中に径5㎜程度の灰白色流紋岩火山礫が散在する流紋岩質凝灰岩と数㎜〜数㎝単位でリズミカルに繰り返し,平行葉理の発達する凝灰質砂岩泥岩互層である.岩石記載:流紋岩質凝灰岩.産地:兵庫県姫路市夢前町莇野,菅生川支流の河床.産状:厚い流紋岩質火砕岩. 結晶片:石英(径<1㎜),斜長石(長径<1.5㎜). 岩片:軽石片(長径<2.5㎜),流紋岩(径<8㎜),泥質岩(径<2㎜). 基質:ガラス片,細粒火砕物質,微細な結晶片. 岩片および微晶サイズの結晶片にやや富む.結晶片の石英は,粒状で半自形を呈する.斜長石は長柱状で半自形〜自形を呈する.岩片の灰白色流紋岩と灰黒色軽石の一部は扁平化し,弧状組織を示す場合がある.流紋岩片は斑晶に乏しく、含有率は10〜25%の割合で含む.基質は淘汰良好で極細粒砂〜シルトの粒度からなり,変質および脱ガラス化している.解釈:母岩である火山砕屑岩中に流紋岩の石質岩片が不規則に散在していることから.この岩相はペペライト(松原・天野,2010など)と解釈される.ペペライトは,岩片の形状から流体状〜球状のペペライトとブロック状のペペライトが共存しているとみられる.このペペライトは七種山層の流紋岩火山礫凝灰岩〜凝灰角礫岩中に産したもので,当地域に存在する白亜紀の大型カルデラ(径14×7km)ではカルデラ形成期に,母岩物質(流紋岩質凝灰岩や凝灰質砂岩泥岩互層などの火山砕屑岩層)の堆積と流紋岩質マグマの貫入・定置が同時に起こったことを示唆する.引用文献 松原典孝・天野一男(2010)地質学雑誌,116,3,134-150. 佐藤大介・山元孝広・高木哲一(2016) 地域地質研究報告5万分の1地質図幅[播州赤穂],岡山,69,地質調査総合センター,11-31. 山元孝広・栗本史雄・吉岡敏和(2000)地域地質研究報告 5万分の 1 地質図幅[龍野],岡山,58,地質調査所,24-43. 山元孝広・栗本史雄・吉岡敏和(2002)地域地質研究報告 5万分の1地質図幅[山崎],岡山,46,地質調査総合 センター,20-30. Yamamoto,T.(2003)The Island Arc,12,Issue3,294-309. 吉川敏之・栗本史雄・青木正博(2005)地域地質研究報告 5万分の1 地質図幅[生野],岡山,47,地質調査総合センター,14-27.</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390862710141934976
  • DOI
    10.14863/geosocabst.2023.0_208
  • ISSN
    21876665
    13483935
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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