(エントリー)房総半島南端地域に分布する海成上部鮮新統千倉層群布良層における層序学的研究

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タイトル別名
  • (entry) Stratigraphic study on the Upper Pliocene Mera Formation, Chikura Group distributed in the southernmost part of the Boso Peninsula

抄録

<p>鮮新世の気候は現在よりも温暖であったと言われている.特に約3.3 Ma~3.0 Maの温暖期は中期鮮新世温暖期と呼ばれ,その気候条件が現代と近いことから,現代の気候アナログ時代として古気候・古環境学的な研究が盛んに行われている.さらに,この時代は古地磁気学的にはガウス正磁極期 (3.596 Ma~2.610 Ma)に相当するが,マンモス逆磁極亜期(3.330 Ma~3.207 Ma),カエナ逆磁極亜期(3.116 Ma~3.032 Ma)を含み,複数の地磁気逆転イベントを経験した時代としても特徴付けられる.したがって,地磁気逆転が地球環境に与えた影響を検証するために適した時代であると言える.しかし,当該時期を含む上部鮮新統にまで到達する良質な古地磁気・古海洋記録をもつ深海底コアは限られており,さらに時間分解能が低いという課題がある.また,陸上に露出する鮮新統間において広域テフラによる同時間面の認定や, 地磁気逆転層位の対比が十分に進んでいないため,2つの地磁気逆転イベントに関する理解は進んでいない.したがって,異なる地層間において層位学的な対応関係を解明し,得られた古地磁気記録を対比することは極めて重要である.本発表では,千葉県南房総市の林道千倉線付近に露出する千倉層群布良層におけるカエナ逆磁極亜帯上部境界付近の層位における古地磁気測定結果と,カエナ逆磁極亜帯中で発見した特徴的な凝灰岩層 (MRT02)の岩相記載とガラス組成の測定結果,鉱物組み合わせの観察結果などを報告する.古地磁気測定では,段階熱消磁および段階交流消磁を実施し,明瞭な地磁気逆転を捉えることができた.しかし,正極性方位と逆極性方位は対称的ではなく,逆転テストに合格しない.これは,地層傾動後に獲得された正極性の二次磁化の影響によるものであると考えられる.この結果は岡田ほか(2012)と整合的である.MRT02は,下位から結晶質・岩片質層,細礫〜中礫サイズの軽石層,淡い小豆色の中粒火山灰,白色の細粒火山灰が連続的に堆積した特徴的な岩相を示し,中粒火山灰層中には下位の軽石が散在している.軽石の石基ガラスの化学組成は,SiO2量が77.5 wt.%前後の流紋岩であり,TiO2量,K2O量はそれぞれ,0.35 wt.%,2.2 wt.%前後である.軽石の斑晶鉱物は直方輝石,単斜輝石,斜長石で,石英や角閃石もわずかに含まれる.  Utsunomiya et al. (2017) では,三浦層群池子層のカエナ逆磁極亜期相当層から薄紫色の火山灰を含むIkT30などの特徴的な鍵層記載が報告されており,そのいずれかと対比できる可能性がある. 本研究で得られた結果は,テフラ層によって異なる地層間で同時間面を認定し,古地磁気記録や古気候・古環境の精密対比に資する可能性がある.今後,三浦層群池子層に挟在するテフラ層のガラス組成や鉱物組み合わせと比較することでテフラの対比を試みる予定である. 謝辞 本研究は,東京地学協会調査・研究助成(研究課題:房総半島南端地域に分布する海成堆積層を用いた後期鮮新世の連続古地磁気変動復元)の一部を使用して行われた.引用文献 岡田 誠・所 佳実・内田 剛行・荒井 裕司・斉藤 敬二,2012,地質学雑誌,118:2, 97-108. Utsunomiya, M., Kusu, C., Majima, R., Tanaka, Y., Okada, M., 2017, Quaternary International, 456, 125-137.</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390862710141939200
  • DOI
    10.14863/geosocabst.2023.0_215
  • ISSN
    21876665
    13483935
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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