豪雨による谷埋め盛土の崩落メカニズム

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  • Mechanism of collapse of valley fill due to heavy rainfall

抄録

<p>2021年台風14号の豪雨時に盛土崩壊が発生した。隣接する谷埋め盛土部で地下水位と歪のモニタリングを行っている。2022年8月~9月の降雨時に,歪変動が認められ9月には300~500μsの変動が検出された。この期間の地下水位観測において地下水位は移動土塊中には認められない。移動土塊中に水位が観測されない場合(間隙水圧が計測されない場合)の歪変動発生メカニズムを現場の計測データで説明するのは困難である。 谷埋め盛土の動態観測を実施している観測ボーリング周辺には,北東・北西方向の断裂が推定されたため,切土部(花崗岩)と想定される箇所でγ線探査を実施した。γ線探査の結果,北東方向の断裂NE(断裂幅:1.9m,走向:N40°E)と北西方向の断裂NW(断裂幅:2.7m,走向:N50°W)を検出した。この2断裂の交差点は,谷埋め盛土中央部に位置する。亀裂の交差部(断裂交差場)では透水性が高く,地下水および物質の重要な移行経路となることが報告されている1)。断裂交差場では,パイピングが発生し湧水・噴砂が認められる。また,地層境界(不整合面)と断裂の交差場ではパイプ流が発生する2)。西村ほか3)では,パイピング破壊の危険度を判定する力学的点検フローを作成し,パイピングが発生する「着目すべき堤体-基礎地盤条件」を示している。地盤条件図の透水層は,地層境界と断裂の交差場で形成されるパイプ流に該当する。また,「行き止まり地盤」は,断裂交差場で形成される噴砂(パイピング)に該当する。上記の不連続面の交差場で発生する「パイプ流」と「パイピング」の事象から,噴砂(パイピング)と低透水層(難透水層)によりパイプ流は閉塞されることで揚圧力が発生し,盛土が持ち上げられて崩壊に至るメカニズムが考えられる。この現象は、「2021年 熱海市の盛土崩壊」でも認められる。 谷埋め盛土調査の着目点としては, ① 不連続面(断裂,地層境界)の分布・・・・・・・地質構造 ② パイプ流上位の難透水層の分布・・・・・・・・・堆積構造 ③「難透水層上位の土塊重量」と「揚圧力」の平衡より崩壊の有無が決まる。 土塊重量>揚圧力・・・・・・・・・・崩壊しない 土塊重量<揚圧力・・・・・・・・・・崩壊する 文献 1)鎧 桂一・澤田 淳・内田雅大(2004):亀裂交差部に沿った方向の透水特性の評価,サイクル機構技法,No.23,pp.63-70.2)吉村辰朗・森山秀馬(2023):不連続面の交差場で発生するパイピングとパイプ流:地盤工学会誌,71(1),45-48.3)西村柾哉・前田健一・高辻理人・牧洋平・泉典洋(2019):実堤防の調査結果に基づいた河川堤防のパイピング危険度の力学的点検フローの提案,河川技術論文集,25,499-504.</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390862710141948160
  • DOI
    10.14863/geosocabst.2023.0_224
  • ISSN
    21876665
    13483935
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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