東南極宗谷海岸露岩域の沿岸湖沼の珪藻群集と基盤隆起

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  • Diatom assemblages related with uplift in the lakes of ice free area along the Soya Coast, East Antarctica

抄録

<p>南極氷床の融解は,おもに氷床縁における比較的温かい深層水の流入に支配されている.一方,南極沿岸の露岩域は最終氷期以降の氷床質量損失に伴って隆起したと考えられるため,その隆起量と速度は氷床後退後の氷床安定性を考える上でも重要である.最終氷期後における東南極氷床の大規模融解後の隆起速度を求める手法の一つとして,沿岸湖沼の堆積物中の珪藻遺骸から,堆積環境が海成から湖成に変化する時期を用いる方法が用いられてきた.しかしながら,沿岸湖沼における湖内の珪藻分布に関する知見が少なく,先行研究における珪藻群集を元にした隆起速度推定には論文間で齟齬がみられた(Takano et al., 2012; Verleyen et al., 2017).そこで我々は,同一の沿岸湖沼から得られた複数の柱状堆積物コア中の珪藻群集を分析し,その群集組成の違いから珪藻群集を制約する環境要因の検討を行った.第61次南極地域観測隊では宗谷海岸・ラングホブデ露岩域の沿岸湖沼ぬるめ池において深度別に4本のコアを採取した.これらの試料中の珪藻群集は,現在の塩分躍層下にある深度16m地点で採取されたコアと塩分躍層上にある深度5-8mのコアでまったく異なった傾向を示した.水深が浅い地点では珪藻群集の多様性が高く,湖の閉塞化に従って海生種から汽水種,更により低塩分の汽水性種への移行が明瞭にみられるが,水深が深い地点では多様性が低く閉塞後も海生種の割合が高い.そのため水深が深い地点では閉塞化に対する応答性が悪いと考えられる.この水深に応じた珪藻群集の違いは他の沿岸湖沼における珪藻群集を用いた堆積環境推定の齟齬を説明づける.ラングホブデより南方の露岩域スカルブスネスでは,海面下の湖沼であるすりばち池や舟底池ではぬるめ池の水深が深い地点の珪藻群集と類似の傾向を示し,水深が浅い沿岸湖沼親子池ではぬるめ池の水深が浅い地点と同様に低塩分化に伴う顕著な群集変動を示した.これらの結果は南極沿岸の露岩域のより精緻な隆起速度を求めるための新たな情報を提供する.引用文献 Takano et al. (2012) Applied Geochemistry 2, 2546-2559. Verleyen et al. (2017) Quaternary Science Reviews 169, 85-98.</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390862710142036096
  • DOI
    10.14863/geosocabst.2023.0_397
  • ISSN
    21876665
    13483935
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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