盲視:第一次視覚野損傷下での視覚意識を伴わない急速眼球運動調節機構

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タイトル別名
  • Blindsight : Saccadic Eye Movement Control Mechanisms Without Visual Awareness in Primary Visual Cortex Lesions

抄録

<p> 第一次視覚野(V1)損傷は,視覚意識,つまり見えるという認識に障害を引き起こす.しかし,V1を損傷した患者さんの一部は,視覚意識障害後も損傷による障害視野内の視覚対象の位置に,急速眼球運動(サッケード)で眼を向けられることが知られている.この現象は,盲視として知られている.つまり,V1損傷後には,視覚情報をサッケード運動に変換する視覚意識を駆動しない神経経路が存在する.我々は,盲視のモデル動物として,片側V1損傷サルを作成し,神経生理学的手法,positron emission tomography(PET),ウイルスベクターを用いた経路選択的遮断法などを用いて,このV1損傷後の視覚運動変換の経路を明らかにした.V1損傷後の視覚情報の取り込みには,上丘を介する網膜-視蓋-視床枕の経路が重要であった.大脳皮質においては,損傷後に頭頂連合野の外側頭頂間溝野(LIP)の役割の増大が確認された.LIPは,視床枕が強く投射するMT/MST領域から入力を受けることから,一連の経路が,V1損傷後に障害視野内の視覚対象へのサッケードによる定位運動に重要な役割を果たしていることを明らかにした.また,この経路を通る視覚情報は,視対象の定位運動の駆動のみでなく,強化学習の二次強化因子として機能し得ることを明らかにした.</p><p> 本研究では,V1損傷後の視覚誘導性眼球運動の駆動を担う網膜から皮質へ向かう経路を明らかにした.また,この神経経路は反射的運動の駆動のみではなく,強化学習の神経機構と協調して,新規行動の獲得も可能にすることを示した.</p>

収録刊行物

  • 神経眼科

    神経眼科 41 (1), 14-23, 2024-03-25

    日本神経眼科学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390862721214504320
  • DOI
    10.11476/shinkeiganka.41.14
  • ISSN
    21882002
    02897024
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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