硝煙弾雨の向こう側 ―戦争フッテージと沖縄戦をめぐる二つのフィルム―

書誌事項

タイトル別名
  • Behind the Powder Smoke and Hail of Bullets: ―War Footage and Two Films on the Battle of Okinawa―
  • ショウエン ダンウ ノ ムコウガワ : センソウ フッテージ ト オキナワセン オ メグル フタツ ノ フィルム

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抄録

本稿は、1990年代の沖縄戦に関する二つのフィルムを取り上げ、フィルムメーカーたちが、どのようにして米軍の戦争のフッテージに描かれた内的なイメージの構造を、軍事中心的なナラティブから、人びとにより焦点がおかれたナラティブへと変容させようと試みたのかについて考察する。ここで取り上げるフィルムは、米軍が撮影した沖縄戦関連のフィルムの収集および上映をおこなう市民による平和文化活動「1フィート運動の会」が、ほぼ全編が米軍のフッテージを再編集して作られた『1フィート映像でつづるドキュメント沖縄戦』(1995年)と、沖縄戦の記憶、とりわけ、「集団自決」を題材に、戦後フランスで最も影響力のある映像作家の一人であるクリス・マルケルが監督した映画『レベル5』(1997年)である。これら二つのフィルムは、制作の主体、意図、あるいは、長さ、手法、ストーリーライン、ナラティブ、プロットなどは異なっているが、いずれも、米軍の戦争フッテージを利用し、そして、1945年の第二次世界大戦終結から50年という節目を意識して1995年前後に制作・公開されたという共通点がある。本稿では、これら二つのフィルムがそれぞれ、いかなる現代史の記憶を蘇らせようと試みたのか、また、戦場の人びとの現実、すなわち、硝煙弾雨の向こう側をどのように想像しようとしたのか、さらに、観客と戦場の人びとのあいだにどのような関係を作ろうとしたのかという点に焦点を当てる。

収録刊行物

  • 地域研究

    地域研究 (31), 35-55, 2024-02

    沖縄大学地域研究所

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