振動に対する淡水二枚貝タテボシガイの反応

書誌事項

タイトル別名
  • The responses of freshwater mussels (<i>Nodularia nipponensis</i>) to vibration.

抄録

<p>水域における杭打設工事は,振動を通じて水底で生活する動物に何らかの影響を与えていると考えられるが,その影響についてはこれまでほとんど考慮されてこなかった.本研究では,希少二枚貝タテボシガイの生息地近傍で行われた杭打設工事において,本種への影響回避,低減の対策検討に資することを目的に,杭打設工事現場近傍の川底において振動測定を行い,室内において振動加速度と周波数を変えた場合のタテボシガイの反応,長期間振動を与え続けた場合のタテボシガイの変化を知るための実験を行った.現地測定及び実験の結果,バイブロハンマ稼働時の川底における振動加速度レベルはタテボシガイの振動に対する閾値の 80 dB 台を超える可能性があり,卓越周波数の 20~60 Hz は本種の高い振動感受性を示した 40 Hz 付近と重なっていたため,杭打設地点近傍の個体は振動に反応し閉殻すると推測された.このため,実際の工事では,保全対策として,振動加速度レベルが 80 dB を超える振動の到達範囲を影響範囲とし,この範囲内の個体を適切な場所へ避難移植した.連続的な振動刺激を長期間与えた実験では,加振グループと非加振グループとの間で湿重量の変化に有意差はみられなかった.本種にとり頻繁な閉殻や閉殻からの回復遅延は,閉殻時間が長くなり,成長に悪影響が生じるおそれがある.しかし,タテボシガイは振動発生とともに瞬時に閉殻するものの,同じ振動が続く場合にはすぐに開殻し閉殻が持続しないため長期振動による影響がなかったと考えられた.以上の結果から,杭打設工事に使用する建設機械選定においては,頻繁に閉殻が起きるおそれのある打撃型よりも,定常振動型のバイブロハンマを選定するほうがタテボシガイの生息環境保全において有効と考えられた.</p>

収録刊行物

参考文献 (4)*注記

もっと見る

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ