地形を踏まえたハザードマップ3段階読図法

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タイトル別名
  • Three-Steps Hazard Map Reading Method Based on the Landform
  • Development based on action researches on in-service teacher training
  • 教員研修の実践に基づく展開

抄録

<p>1 「地形を踏まえたハザードマップ3段階読図法」の必要性</p><p> 2019年に確定した大川小学校津波訴訟判決のとおり,東日本大震災後の学校では,ハザードマップの想定外まで含めた防災の取組が求められている。そのための具体的方策として,発表者らは「地形を踏まえたハザードマップ3段階読図法」(右下図,下記のとおり改訂版)を提唱し(村山ほか,2019),実践を重ねてきた。地形は自然災害の素因として指標性が高く,地形を踏まえることで,ハザードマップに示された想定結果の理由を理解でき,ひいては想定外まで合理的に考えることができる。「3段階読図法」は,地理学界のこの「常識」を背景にしている。</p><p></p><p>2 教員研修等の実践を踏まえた「3段階読図法」の展開</p><p> 2019年度から,発表者らは石巻市防災主任研修(の一部)を担当しており,その中で「地形を踏まえたハザードマップ3段階読図法」に基づく研修を行い,成果も上げてきた(小田ほか,2020;Sakurai et al.,2021;村山ほか,2022)。</p><p> 同市他の実践を重ねるなかで,ハザードマップの想定外まで考えるためには,地形に加えてハザードマップの想定条件の把握(受講者に理解してもらうこと)が重要であることに,発表者らは(改めて)気づいた。そこで,本来は「1ハザードマップを読む」に含まれる「想定条件を理解する」を0として目立つように,図にも表現した。そして,下記は,ハザードマップの読図において把握しておくべき,想定条件についてまとめたものである。</p><p></p><p>○ 洪水浸水想定区域の設定</p><p>・想定対象河川(河川管理者:国,都道府県,その他)</p><p>・想定雨量 想定最大規模の雨量 + 地形</p><p>○ 土砂災害警戒区域の設定</p><p>・地形条件(崖の高さ,傾斜,谷地形,履歴)</p><p>+ 社会条件(人家,立地予定等)</p><p>○ 津波浸水想定区域の設定</p><p>・想定地震(想定海底断層) + 海底地形 + 地形</p><p>+ 潮位,海岸堤防(越流時点で破壊等),地盤沈下等</p><p></p><p> また,地形を把握する方法として,現地観察等に加えて,各種地図の利用が挙げられるが,下記の地図群の利用が有効であることを確認した。また,下記のいずれの地図も,「重ねるハザードマップ」のみで,各種ハザードマップとともに,表示,検討が可能となったため,格段に利用しやすくなった。</p><p></p><p>○ 地形がわかる地図 下記および下記の組合せ</p><p>・地形図(等高線,崖記号,標高点など) →難しい</p><p>・陰影起伏図 →起伏の感覚的理解</p><p>・色別標高図(自分で作る色別標高図)</p><p>・地形分類図 →とくに低地内の微地形理解</p><p></p><p> 以上から,たとえば下記のように,合理的に「想定外」を考えられるようになる。</p><p></p><p>○ 地形を踏まえて「想定外」を合理的に考えられる事例</p><p>・洪水 低地で想定浸水区域なし(白色)</p><p> → 想定対象河川がないため? → 浸水を想定すべき</p><p>・土砂災害 谷の出口や崖下で警戒区域なし(白色)</p><p> → 人家がないため? → 土砂災害を想定すべき</p><p></p><p> 「地形を踏まえたハザードマップ3段階読図法」は,学校防災(防災管理と防災教育)の基盤となり得る。学校の校地,学区,通学路の安全確認等に加えて,児童生徒向けの教育,なかでも中学校や高校での地理教育にも利用可能であると考える。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390862809659628416
  • DOI
    10.14866/ajg.2024s.0_194
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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