フランチャイズチェーンにおける店舗立地と事業承継

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  • Store Location and Business Succession of Franchise Chains

抄録

<p>日本におけるフランチャイズチェーン(以下,FC)は,その市場規模が約27兆円であり(日本フランチャイズチェーン協会 2023),消費者の生活に欠かせない存在となっている.他方,日本は人口減少社会に突入し,今後,小売・外食・サービス業などでは市場規模の縮小に伴い,閉店する店舗が増える業種・業態が出てくることが予想される.BtoCの各種店舗は人々の生活を支える上で重要であり,市場縮小期の店舗立地を理解するためには,小売・外食・サービス業などの店舗がどのような論理で立地し,維持・継続されているのかを明らかにする必要がある.本報告で研究対象とするFCは,本部企業(フランチャイザー)と店舗を運営する加盟者(フランチャイジー)が異なる主体であるという特性を持つため,店舗の立地や維持,撤退のメカニズムを検討する際に,この特性を考慮する必要がある.以上を踏まえ,本報告では,FCを展開する本部企業と加盟者へのインタビュー調査に基づき,FCの特性に着目した店舗の立地のメカニズムと市場縮小期における店舗の維持・継続の方法を検討する.</p><p> FCにおいては,直営店も活用されるが,本部と店舗は別の主体によって運営される.そのため,FCの店舗展開は,必ずしも本部企業のみの意向では決定できず,ある地域に新規に出店する場合は,その地域に加盟希望者が存在するかどうか,既存の加盟者がその地域に増店する意向があるかどうかなど,加盟者の存在や意向が重要となる.他方,店舗の維持に関しても,加盟者の契約更新の有無や後継者不在など,加盟者側の事情で店舗が維持できなくなることがある.たとえば,コンビニエンスストアにおいては,オーナー(加盟者)の高齢化による事業承継が課題として指摘されている(経済産業省 2023).</p><p> FCの新規店舗の出店に関しては,加盟者に多額の投資が必要になる場合が多い.しかしながら,出店する店舗が必ずしも成功するとは限らないため,出店希望者に不安が生じる.これに対して,FC本部企業では,①最初に直営店や子会社で出店し,売上や利益などの実績が見えてきた時点で加盟者に店舗を引継ぐ,②店舗運営の経験がある既存の加盟者に増店を依頼して出店する,などの対応がなされている.</p><p> FCの店舗を維持するためには,加盟者の事業承継が重要となる.加盟者の事業承継に関しては,本部企業によるサポートが行われている.それは例えば,①加盟者の社長の子世代のつながりを作る,②スーパーバイザーが事業承継をサポートする,③将来のオーナーを育成する事を目的とした研修制度を導入する,④加盟者の事業承継者の条件を緩和する,などである. 加盟者が事業承継できない場合,本部企業が,その加盟者の店舗を直営店や子会社で一時的に引継ぐことによって店舗を継続する対応がみられる.このような店舗は暫定的な直営店であり,将来的には加盟者に引継ぐ店舗として位置づけられている.FCにおける直営店は,テストマーケティングや社員教育などで使われる位置づけもあるが,加盟者の出店支援やフランチャイズ店舗を継続させる役割も果たしている.さらに,本部企業主導で加盟企業を合併して子会社化することによって店舗を継続する取組みも見られた.FCにおける店舗の新規立地や維持・継続にあたっては,本部企業が加盟者の新規出店や事業承継をサポートしたり,一時的に直営店として引継ぐなどの対応を行うだけではなく,加盟者が本部企業からの依頼によって既存店舗を引継いだり新規出店を行うなど,本部企業と加盟者が協同して店舗網を構築している.</p><p>文 献</p><p>経済産業省2023.新たなコンビニのあり方検討会.https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/new_cvs/index.html(最終閲覧日:2024年1月17日)日本フランチャイズチェーン協会 2023.2022年度「JFAフランチャイズチェーン統計調査」https://www.jfa-fc.or.jp/folder/1/img/20231017101510.pdf(最終閲覧日:2024年1月17日)</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390862809659711104
  • DOI
    10.14866/ajg.2024s.0_250
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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