国有・民営・外資系企業の本社立地からみる中国都市の特徴

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  • Characteristics of Chinese Cities Based on the Location of Head Offices of State-owned, Privately-owned and Foreign-invested Enterprises

抄録

<p>本研究は、「中国企業トップ500」と「2021年胡潤による中国外資系企業と香港・マカオ・台湾系企業トップ100」の統計データを用いて、中国の国有企業、民営企業、外資系企業を対象とし、時系列で本社立地、規模(売上高)、業種の変化及び立地特徴を分析したうえで、中国都市の特徴を明らかにすることを目的とする。</p><p> この20年の間、国有企業、民営企業、外資系企業の働きにはそれぞれの特徴があった。まず、国有企業は、国務院の国有資産監督管理委員会(国資委、1988 年発足)管理下の中央企業と地方政府(省・自治区・市政府)管理下の地方国有企業、さらには国有企業が100%の株を持つ子会社と最大数の株を持つかつ決定権を有する企業の4種類ある。2001年、2010年、2019年の「中国企業トップ500」を用いて分析した結果、企業数からも、規模からも、業種からも、いずれの年次も、首都である北京は絶対的な優位性を持っていることは否定できない。また、2位の上海、3位の広州は匹敵するほどでもない。一方、北京に本社を置いた国有企業の中で、三分の二は中央企業であることが指摘されたほか、2015年に『京津冀協同発展規划網要』では、一部の非首都機能を北京以外の都市へ段階的に移転することを発表された。その非首都機能の一つは、企業の本社機能である。したがって、中国政府の政策のもとで、国有企業の本社は、全国の各都市へ移転することによって、これから中国の都市構造は大きく変わっていくであろう。</p><p> 民営企業は国有企業、港澳台企業、外国企業を除いたすべての企業とする。民営企業は主に社体企業、郷鎮企業のもとで発展してきた企業形態である。ここに2001年、2010年、2019年に「中国企業トップ500」に入った民営企業を分析した結果、この20年間で企業数は倍増、規模は約40倍拡大し、民営企業に参入できる業種は幅広く広がったことから、堅調に成長している民営企業の姿を見えた。民営企業の企業数から、明確な本社の集積傾向は見られなかったが、売上高を合わせてみると、より規模が大きい企業は深セン、北京に本社を置くようになっている。また、深センは北京よりも民営企業の本社を進出させる力が強いと言えるだろう。</p><p> 一方、1978年に改革開放政策が実施されて以来、多くの外資系企業(港澳台企業を含む)は次第に中国市場に参入した。2001年に中国は膨大な低賃金労働力が魅力で、「世界の工場」の特徴が色濃く、特に深セン、北京、蘇州は電子情報製品の製造をはじめとする製造業に依存していた。一方、2020年には「世界の市場」へ変化しつつ、産業構造も医薬品製造、金融や情報通信関連のサービス業へシフトしつつある。外資系企業は生産部門だけではなく、研究部門などより中枢管理機能に近い部門を中国に置くようになった一方、進出先は上海、北京に特化する傾向が現れた。今後、中国経済に占める外資系企業の比重もより高まっていくと考えられる。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390862809659742464
  • DOI
    10.14866/ajg.2024s.0_32
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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