協同空間としての商店街におけるまちあるきイベントの実践

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タイトル別名
  • Practice of town walk events in the shopping street as collaboration place
  • Case study of Toyohashi City, Aichi Prefecture
  • 愛知県豊橋市を事例として

抄録

<p>1. 背景と目的</p><p>商店街は地域商業が集積する場の一つであり,商品販売や資産価値の向上,雇用創出といった経済的な役割だけでなく,地域の伝統や文化の継承・発展,景観の維持・改善など,地域における文化的・社会的な役割を果たしてきた(渡辺,2014)。そのため,今後も新たな活動の創出やネットワークの構築が行われるポテンシャルを有する場として注目されている。一方,昨今は地域の地理・歴史的な特徴や魅力を発見する「まちあるき」が脚光を浴びている。この背景には,成熟や多様化が強調される時代において,まちあるきが本質的に持つ感情的な価値が注目されていることが挙げられる(北,2023)。</p><p>しかしながら,持続的なまちあるきの実施にあたっては,その対象となる地域との実施主体との対称的な構造が求められる。この点で商店街を対象としたまちあるきに目を向けると,飲食やテナント主との交流などを通じて参加者と商店街とのつながりを構築しやすく,商店街は「協同」を実現しやすい場所であると言える。そこで本発表では,「協同空間」の視点から,地方都市まちなかにおける商店街を場としたまちあるきイベントの実践について検討することを目的とする。</p><p></p><p>2. 研究対象地域の概要</p><p>本発表で対象とする愛知県豊橋市は,人口約36万の東三河地域の中心都市である。豊橋駅を中心として主に東側に広がる中心市街地には,商店街が発達している(図1)。1990年代頃から中心市街地における大型店の閉鎖や公共施設の郊外移転などにより,中心市街地の商業機能が低下した。しかし,商店街や市民による内発的なまちづくり活動が行われるとともに,商店街が持つレトロな雰囲気の再評価や大規模な市街地再開発の進展に伴い,新しい形での「にぎわい」が創出されている。</p><p></p><p>3. 事例および分析手順</p><p>本発表では,豊橋市中心市街地における商店街を対象に,2022年と2023年に実施されたワークショップ形式のまちあるきイベント「まちを知り,まちを伝える~まち歩きで発信する豊橋の魅力」をとりあげる。このイベントは,地元企業が主体となり,大学と協同して実施されたものであり,最終的なアウトプットは「まちあるきマップ」を作成することを目標としている。イベントの実施にあたり,参加者は講義やヒヤリング,フィールドワーク,ディスカッションを通じて商店街関係者と交流を深めた。特にフィールドワークにおいては,適宜,商店街を利用したり関係者にヒヤリングを行ったりするなど,参加者は商店街関係者とつながりを構築しながらマップを作成しており,「協同」の側面を見出すことができる。</p><p></p><p>4.結果</p><p>商店街と「協同」してまちあるきイベントが実施できた背景には,イベント主催者と商店街関係者との人的ネットワークの存在や,内発的に地域を変えようとする意思を持つキーパーソンの存在が挙げられる。発表当日は,商店街の歴史やそこで行われてきた各種の取組み・イベントなどの分析を通じて,「協同空間」としての場の素地が形成されてきた過程を紹介する。次に,まちあるきイベントにおける運営者・参加者と商店街との「協同」のプロセスや結果を整理する。最後に,「協同空間」としての商店街の役割とその条件や課題を考察する。</p><p></p><p>参考文献</p><p>北 雄介(2023):『街歩きと都市の様相―空間体験の全体性を読み解く』京都大学学術出版会.</p><p>渡辺達朗(2014):『商業まちづくり政策―日本における展開と政策評価』有斐閣.</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390862809659763712
  • DOI
    10.14866/ajg.2024s.0_76
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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