十勝岳ジオパークの特徴を世界のジオパークと比較する

書誌事項

タイトル別名
  • Characteristics of Tokachidake Geopark in comparison with UNESCO Global Geoparks in the world

説明

<p>1.はじめに</p><p> 十勝岳ジオパークは2022年1月28日に認定された日本ジオパークで、北海道のほぼ中央部、美瑛町および上富良野町をエリアとする。エリアの南東部には活火山十勝岳があり、十勝岳から大雪山(旭岳)にかけて、標高約2000mの第四紀火山が連なる。その西側山麓に位置する当地域は、農業、畜産業を主要産業としている。本発表では、十勝岳ジオパークの特徴と地理学的意義を、世界のジオパーク(ユネスコ世界ジオパーク)との比較から論じることとする。</p><p> 2.十勝岳ジオパークの概要</p><p> 十勝岳ジオパークのテーマ・ストーリーの前提となる大地の成り立ちは、次の4つのステージに分けられる。</p><p> (1)白亜紀以降のプレート運動による北海道の形成(付加体や変成岩よりなる基盤岩の形成)</p><p> (2)約280万~70万年前の珪長質マグマの噴火による大規模火砕流堆積物(波状丘陵)の形成</p><p> (3)過去約100万年間の火山活動による十勝岳連峰の形成</p><p> (4)過去1万年間の十勝岳火山の活動</p><p> このように、地史の大部分は火山活動とかかわっている。地域の景観は、活火山十勝岳を中心とする十勝岳連峰(上記(3)および(4)にかかわる)を背景に、広大な畑作地帯の広がる波状丘陵(上記(2))が占めている。また、明治期の入植および開拓の歴史と、1926(大正15)年5月24日の十勝岳噴火に伴う融雪型火山泥流による災害と復興の過程は、地域の歴史を語るうえで必ず言及される史実である。地域の自然環境、産業、歴史、文化、いずれも火山活動と密接にかかわっており、ジオパーク活動の目標も火山と共生する地域を作ることに大きな比重がおかれている。</p><p> 3.火山地域にあるユネスコ世界ジオパーク</p><p> 現時点(2024年1月)で、世界には195地域のユネスコ世界ジオパークが存在する(注:十勝岳ジオパークは「日本ジオパーク」でありこの数に入らない)。このうち、23地域には活火山(過去1万年以内に活動した火山)が、13地域には第四紀火山(活火山を除く)が存在しており、世界のジオパークの18%以上が火山を擁する。年代を問わなければ、ジオパークの半数以上にはかつての火山活動の痕跡をしめす岩石や堆積物が存在する。世界のジオパークの中で、十勝岳と共通の特徴を持つ地域、すなわち、大規模火砕流堆積物をともなう火山は、日本列島およびインドネシアに多い(洞爺湖有珠山、阿蘇、Baturなど)。また、融雪型火山泥流を経験しているジオパークは、アンデス山脈(チリのKütralkuraなど)やアイスランド(Katla)といった、氷河や万年雪の存在する地域に分布する。火山災害と復興をテーマとするジオパークの代表例は、島原半島であろう。</p><p> 4.十勝岳ジオパークの独自性はあるか</p><p> 世界のジオパークと比較したときに、十勝岳ジオパークの独自性はあるのだろうか。発表者は、次にあげる特徴は十勝岳のユニークな点と考える:(1)第四紀の全般にわたって大規模噴火を繰り返してきたこと、(2)寒冷地域に存在するため数百年前の火山地形が植生に覆われることなく観察できること、(3)地元で制作された多くの芸術作品や文学作品において火山活動がモチーフとして取り上げられていること、(4)地域および行政が一体となって火山防災に取り組んでいること。</p><p> 5.まとめ</p><p> 地形や環境のダイナミックな変化を実感できる火山は、世界の各地でジオパークの主要なテーマとなっていることがわかった。十勝岳ジオパークは、地域の産業、文化、歴史が、火山活動とダイレクトにかかわる点で貴重である。今後は、地形学、地質学、火山学のみならず、人文・自然にまたがるさまざまな学術分野から、十勝岳ジオパークが注目されることを期待したい。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390862809659766784
  • DOI
    10.14866/ajg.2024s.0_83
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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