歯科衛生士対象のリカレント教育プログラムの実践(第4回目)

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Abstract

<p>(緒言)</p><p> 2020年の千葉県の高齢化率は27.0%であり,75歳以上の入院患者や要介護高齢者の認定率および認知症高齢者は増加すると推計されている.これらの対象者は,口腔のセルフケアが十分できず,専門的な口腔健康管理が必要となる場合が多い.</p><p> 我々は,2019年から地域包括ケアシステムの理解と高齢者介護予防の実践をするリカレント教育を目的とし,歯科衛生士を対象に千葉県立保健医療大学歯科衛生士研修会を開催してきた.2021年度に開催した第3回研修会後の質問紙調査において「今後希望するテーマ」として,口腔粘膜の観察方法,口腔粘膜病変に関するテーマの希望が多く挙げられていた.</p><p> また,担当歯科衛生士によるメンテナンスにおいて口腔内観察の際に口腔粘膜の異常が認められ,歯科医師による検査を実施し早期扁平上皮癌等を含む口腔粘膜病変として診断・治療に至った症例が報告されている.</p><p> そこで第4回研修会では,テーマを「口腔粘膜について」とし,口腔内の観察方法を習得し,口腔粘膜の異常所見について共有することを目標としたリカレント教育プログラムを実施した.</p><p> 本報告では,本研修会の概要ならびに,研修会終了後に本研修会参加者自身の振返りからの理解度等を検討する目的で実施した質問調査結果について報告した.</p><p>(研究方法)</p><p> 対象は千葉県歯科衛生士会,千葉県立保健医療大学歯科衛生学科同窓会の協力を得て募集し,参加した13名を対象に計3回の研修会を開催した.</p><p> 研修会の内容は1回目(2022年11月)「口腔内の観察の目的,口腔内の観察方法について」は,歯科医師(口腔外科)による講義,2回目(2022年12月)「口腔粘膜の代表的な病変の知識」は,歯科医師(口腔病理)による講義,3回目(2023年3月)「口腔内の観察法の演習,擦過細胞診について」は,歯科医師(口腔外科,口腔病理)による講義,実習とした.実習では常に定められた手技での口腔粘膜を含めた口腔内観察と擦過細胞診の細胞採取を体験し,その後,感想や意見交換をした.</p><p> 3回目研修会終了後に,Microsoft Formsにて無記名設定の質問調査を実施した.質問項目は,一部自記式多肢選択式とし,質問項目は,年齢,勤務状況,研修会全体の満足度,研修会前後の理解度,今後の研修会のテーマ,研修会に対する要望とした.</p><p>(結果)</p><p> 3回の研修会では,それぞれ13名の参加者があった.実習後の感想には,「口腔外科に大変興味がある」,「口腔観察の際,口腔粘膜がすごく気になる」,「細胞診の結果まで知りたい」等が挙がった.</p><p> 研修会後の質問調査では,7名から回答を得た.本研修会全体の満足度は「とても満足」「満足」を合わせて100%であった.研修会前後の理解度については,口腔粘膜の正常所見,異常所見,観察方法,主訴の確認方法の理解度が向上していた.また,口腔粘膜病変の診療補助について,研修会前は「十分知っていた」「やや知っていた」を合わせて3名(42.9%),「あまり知らない」2名(28.6%)であったが,研修会後は「十分理解できた」「やや理解できた」の回答が7名(100%)となった.さらに,参加者全員において本研修会内容が今後の口腔粘膜病変に対する診療補助保持に活用できると回答した.</p><p>(考察)</p><p> 研修会の講義と実習を通して,対象者は口腔粘膜の正常所見や異常所見,口腔内の観察法,主訴の確認方法,口腔粘膜の診断方法,口腔粘膜病変の診療における診療補助の理解度が向上したと考えられた.したがって,対象者はさらに口腔粘膜病変に対し興味を持ち,診療補助の知識や技術の再確認ができたと思われた.</p><p> 歯科衛生士は今後,さまざまな環境において口腔観察を行う機会を持ち,口腔粘膜病変を発見する機会の増加が予想されることからも,今回の研修会は,歯科衛生士にとって有意義であったと考えられた.</p><p> 参加者の意見をふまえて,今後の歯科衛生士研修会について,開催内容と開催方法から,多くの参加者を得て継続開催を企画していく所存である.</p><p>(倫理規定)</p><p> 本研究は,千葉県立保健医療大学研究倫理審査委員会の承認(2022-17)を得て実施した.</p>

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Details 詳細情報について

  • CRID
    1390862809659789440
  • DOI
    10.24624/cpu.15.1_1_66
  • ISSN
    24335533
    18849326
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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