父方と母方の祖父母の学歴が子どもの教育達成に及ぼす影響 : 日本の事例

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  • Effect of Paternal and Maternal Grandparents' Education on Children's Educational Attainment : The Case of Japan

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この研究の目的は,親の学歴の影響を考慮したうえで,父方母方祖父母四人のうち誰の学歴が孫の教育達成に影響を及ぼすのかを明らかにすることである.これまでの階層再生産研究では,親世代と子ども世代の地位の関連を推定する二世代間の階層再生産研究が中心であった.近年では,家族に起因する不平等の継続性を明らかにするために,親にも親がいることを考慮した,祖父母世代をも含めた三世代間階層再生産研究が増えている.しかし,これまでの三世代間階層再生産研究のほとんどは,父方母方の祖父祖母の違いを考慮して分析していなかった.ただし,四人の祖父母を同時に分析モデルに含め祖父母の学歴が孫の教育達成に及ぼす影響を推定している研究も少なからず存在する.しかし,これらの研究の多くは米国などの西洋圏を対象としてきており,どの祖父母が影響を及ぼすのかについて,結果はまちまちであった.また,西洋圏の社会とは,家族制度や,文化的な違いがある社会では,どのようになっているかはあまり明らかになっていない.そこで,本研究では,西洋圏の社会とは異なる可能性がある東アジア圏に位置する日本社会を対象とし,父方母方祖父母四人の学歴を考慮したうえで,三世代間の学歴再生産研究をおこなう.使用するデータセットは,2006年に調査が実施された「世帯内分配・世代間移転に関する調査」である.この調査は,調査対象者にたいして,その親と子どもの情報を尋ねている.三世代間階層研究のためには,子どもを分析単位とする必要があるので,データセットを再構成した.結果として,分析サンプルは,1,966ケースとなった.分析には,構造方程式モデリングをもちいた.また,祖父母の学歴についての欠測が多いため,欠測を補完する多重代入法をもちいた.分析の結果として,親の学歴を考慮してもなお,母方祖父の学歴が孫の教育達成に直接,正の影響があることが明らかとなった.本研究の貢献は二つある.第一に,父方と母方の祖父母四人を同時にモデルに組み込み,三世代間における系譜を考慮し,母方祖父の重要性を明らかにしたことである.第二に,東アジア圏に位置する日本社会を対象としたことである.西洋社会を対象とした先行研究の結果とは異なった結果が得られたが,これは,家族制度の文化的な違いに起因する可能性がある.

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