日本語版自己概念・同一性尺度(The Japanese version of the Self-Concept and Identity Measure: SCIM-J)の作成および妥当性,信頼性の検証
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- 柴田 康順
- 大正大学臨床心理学部
書誌事項
- タイトル別名
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- Development of the Japanese Version of the Self-Concept and Identity Measure (SCIM-J) and the Examination of its Reliability and Validity
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説明
<p>本研究の目的は,Self-Concept and Identity Measureの日本語版(SCIM-J)を作成し,妥当性と信頼性を検証することである。SCIMを日本語訳したうえで,大学生400名および18歳以上の成人600名を対象としたインターネット調査を行った。確認的因子分析の結果,SCIM-Jの因子構造は,1項目を除いて原版と同じく,「統合された同一性」,「混乱した同一性」,「同一性の欠如」の3因子構造であることが確認された。多母集団同時分析の結果,性別の等質性が確認された。SCIM-Jの項目についての内的一貫性および再検査信頼性はともに良好であった。SCIM-Jの下位尺度の基準関連妥当性は,同一性の構造と形成過程のほか,同一性障害,抑うつ,感情調整困難性,境界性パーソナリティ特性,自傷傾向といった精神病理的指標との関連から評価された。その結果,「統合された同一性」の適応性と「同一性の欠如」の不適応性が示された一方,「混乱した同一性」は適応的,不適応的指標との関連が示され,健全な発達における同一性の危機を測定しているものと考えられた。これらの結果から,SCIM-Jは成人の同一性の問題における精神病理的側面を測定する尺度として,妥当性と信頼性をもつことが確認された。</p><p>【インパクト】</p><p>SCIM-Jは,DSM-5でパーソナリティ障害についての代替診断モデルが発表され,その基準に同一性が含まれたことを受けて作成された新しい同一性測定尺度であり,臨床的な同一性の問題を評価できる。本研究でSCIM-Jの妥当性と信頼性が示されたことで,これまであまり重要視されてこなかった成人の同一性の問題がメンタルヘルスに与える影響について,SCIM-Jを用いた簡便なアセスメントの可能性が示された。</p>
収録刊行物
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- 発達心理学研究
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発達心理学研究 35 (3), 107-121, 2024-09-20
一般社団法人 日本発達心理学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390864634467455616
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- ISSN
- 21879346
- 09159029
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可