都市型三次救急医療施設からみた交通事故における胸部外傷の実態とわが国での現況

  • 石井 亘
    京都第二赤十字病院救命救急センター・重症外傷センター救急科
  • 神鳥 研二
    京都第二赤十字病院救命救急センター・重症外傷センター救急科
  • 宮国 道太郎
    京都第二赤十字病院救命救急センター・重症外傷センター救急科
  • 一杉 正仁
    滋賀医科大学社会医学講座法医学部門

書誌事項

タイトル別名
  • The actual situation of chest trauma in traffic accidents from the urban critical care center and national trauma database
  • トシガタ サンジ キュウキュウ イリョウ シセツ カラ ミタ コウツウ ジコ ニ オケル キョウブ ガイショウ ノ ジッタイ ト ワガクニ デ ノ ゲンキョウ

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説明

【はじめに】交通事故における胸部外傷予防対策としてシートベルトの着用、チャイルドシートの使用およびエアバッグの展開があげられるが、いまだ相当数の重症胸部外傷が発生している。【目的】都市型三次救急医療施設である京都第二赤十字病院(以下、当院)の重症外傷症例や日本外傷データバンク(JTDB)の交通外傷症例の分析を行い、胸部外傷の効果的な予防策について検討する。【方法】対象は、2019 年4 月1 日~ 2021 年12 月31 日の約3 年間として、当院救命救急センターで診断しJTDB に登録した1,342 例を検討した。また、JTDB に登録された2004 ~ 2019 年の交通外傷症例13 万1,284 例を検討した。【結果】当院での非交通外傷群(1,020 例)と交通外傷群(322 例)で検討すると胸部AIS(Abbreviated Injury Score)は交通外傷群で有意に高値(p < 0.0001)であり、Injury Severity Score(ISS)は交通外傷群で中央値(IQR):13(9-20)、非交通外傷群で中央値(IQR):9(9-16)であり、有意に交通外傷群で高値であった。交通外傷群の胸部外傷を有する症例での検討では、歩行者のISS、入院日数、死亡率はとくに高値であった。JTDB の交通外傷での解析では、胸部外傷群でFAST 陽性率や死亡率が有意に高値で、Glasgow Coma Scale(GCS)は有意に低値であった。また、胸部外傷群で顔面、頸部、腹部、脊椎、上下肢のAIS は高値であったが、頭部のAIS は非胸部外傷群で高値であった。胸部外傷群の歩行者のISS、入院日数、死亡率はとくに高値であった。【考察】当院でのデータおよびJTDB の解析によって、胸部外傷を有する症例では全身の重症度が高く、とくに歩行者で顕著であった。交通外傷患者でも、まず歩行者を優先に胸部外傷の重症度を低減させる取り組みが必要である。

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